隅々すみ/″\)” の例文
これは、その濁つた、黄いろい光が、隅々すみ/″\に蜘蛛の巣をかけた天井裏に、ゆれながらうつつたので、すぐにそれと知れたのである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うしろ隅々すみ/″\についてゐる瓦斯ガス裸火はだかびの光は一ぱいにつまつてゐる見物人の頭にさへぎられて非常に暗く、狭苦せまくるしいので、さるのやうに人のつかまつてゐる前側まへがはの鉄棒から
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
最初老医師は庭の隅々すみ/″\や置石の陰やに黄ろい粉のやうなもののあるのを見て何だらうとのみ思うてゐた。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
そして自分の心持をかくす為めに丸田は此の練兵場の隅々すみ/″\までも響くやうな指笛を鳴して見せた。子供は喜んだ。遠くの方から白犬が此方を目がけて飛んで来た——。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
最初さいしよ、十にん兵士へいし棍棒こんぼうたづさへてました、此等これらみんな三にん園丁えんていのやうな恰好かつかうをしてて、長楕圓形ちやうだゑんけいひらたくて、隅々すみ/″\からは手足てあしました、つぎたのは十にん朝臣てうしん
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
一方かた/\仲働なかはたらきふくのこゑ、叮嚀ていねい叮嚀ていねいにとおつしやるけれど、一にちわざうして左樣さう行渡ゆきわたらりよう、隅々すみ/″\隈々くま/″\やつてておたまりがらうかえ、ところをざつとはたらいて、あとはいづれもとなれさ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その隅々すみ/″\までもゆるげるは彼のためなりき。
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
壁から、隅々すみ/″\から
見て大いに驚き盜人は何所へゆきしやらんと家の隅々すみ/″\までさがしけれども最早もはやのがれ行しと見えてには切戸きりどの明て有しかば若い者共表へ走り出其所そこ此處ここよとたづねけるにまたとなりの伊勢屋三郎兵衞方にても盜賊入たりとて大いにさわぎ立ち男共大勢立出見るに板塀いたべいの上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)