おとしい)” の例文
新字:
お品は始めてその叡知えいちの鋒鋩を見せました。そのお品の言葉が本當なら、曲者は房吉をおとしいれる積りでやつた細工でせう。
二言目ふたことめにはお金がかかるお金がかかると云ひ、藝術の作品を金錢に計量しなくては承知しない母親の態度にもあきたらず、こんな迷惑な地位に自分をおとしい
但しは此の横笛を飽くまで不義淫奔におとしいれんとせらるゝにや。又しても問ひもせぬ人の批判、且つは深夜に道ならぬ媒介なかだち、横笛迷惑の至り、御歸りあれ冷泉樣。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
奪ひ取夫而已のみならず浪人道十郎へ右の罪科を悉皆こと/″\塗付ぬりつけ終に公儀をあざむむじつおとしいれたる段證據人忠兵衞が申立の通りいさゝか相違なく聞ゆ然るに忠兵衞は恨み有者故右樣の事を申立候などと無體の儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
善き加特力カトリコオ教徒はこれとことにて神の愛子まなごなり、これをおとしいれむには惡魔はさま/″\の手立を用ゐざること能はず。惡魔はわれ等を誘ふなり。われ等は弱きものなればその手の中に落つること多し。
ましてや他人たにんそこふかき計略けいりやくふちるべきならねばおとしいれられてのち一悔恨ひとくわいこんむなしくなみだくてりかゝる憂苦いうくつながるゝ情緒じやうちよ思慮しりよ分別ぶんべつ烏羽玉ぬばたまやみくらきなかにも星明ほしあかりに見合みあはせて莞爾につことばかり名殘なごり笑顏ゑがほうらさびしくいざとうながせばいざとこたへて流石さすがにたゆたは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平次は少し辟易へきえきしました。こんな人格などといふものを、とうの昔に破産してしまつたらしい浪人者は、人をおとしいれることなど何んとも思つてゐないでせう。
右京を窮地きゆうちおとしいれた上、吉彌を亡きものにして、京之助に家督をがせる魂膽こんたんをめぐらし、着々それを實行してゐた事を平次に證明されて、今更驚きあきれるばかりでした。
その間にお筆は、平次が親元になつて、紅屋に嫁入りし、煙草入細工をして、藤吉をおとしいれようとした彌惣の伜彌三郎は、他の惡事まで露見して、どこともなく逐電ちくでんしました。
國をはれたのを、事情を知つて居る高木勇名の讒言ざんげんに相違ないと信じ込み、八方手を盡しておとしいれ、その結果、續いて、高木勇名も永の暇になり、流れ/\て二人は、同じ江戸の
血を雜巾ざふきんか何かにひたして、二合半こなから坂の春日邸下になすつたり、石垣を熊手か何かで引つかいて、あわよくば春日邦之助を無實の罪におとしいれ、自分は何時までもきれいなお孃さんと
切支丹でないとすると、江戸を恐怖のドン底におとしいれたのは、一體何者の仕業しわざでせう。
齒を喰ひ縛つてからくも身體をさゝへて居るうちに、上から射した蝋燭の光で、自分をこの九死のさかひおとしいれたのは、臆病者の勇吉だとはわかりましたが、下の舟に居る相棒がわかりません。
用人の大澤幸吉と腹を合せて、事毎にお紋母子をおとしいれようとしたといふのです。
「百二十石の祿を捨てても、直參の非道をこらせば、をしむところは御座いません、——父上樣も五年前、この芝田要が惡人共におとしいれられるのを救はれて三百石の高祿を捨てて浪人なされました」