錫杖しやくぢやう)” の例文
立木觀音で艇を出でゝ、立木をきざんだ本尊の古拙ではあるが面白い像を見、勝道上人の所持であつたといふでん刀子たうすだの錫杖しやくぢやうだのを見た。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
仰有おつしやつたが、御手おんて錫杖しやくぢやうをづいとげて、トンとろしざまに歩行あゆらるゝ……成程なるほど御襟おんゑり唾掛よだれかけめいたきれが、ひらり/\とれつゝらるゝ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや。けふは修行中の草鞋穿わらぢばきだから御免かうむる。焉馬あつたら又はう。」をはつて壽阿彌は、岡崎町の地藏橋の方へ、錫杖しやくぢやうき鳴らして去つたと云ふのである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
手先の一人は、倉松の持つて居た錫杖しやくぢやうが、眞刀を仕込んだ物騷なものだつたことを發見しました。
瀧口いまは、誰れ知れる人もなき跡ながら、昔の盛り忍ばれて、盡きぬ名殘なごり幾度いくたび振𢌞ふりかへりつ、持ちし錫杖しやくぢやうおもげに打ち鳴らして、何思ひけん、小松殿の墓所ぼしよして立去りし頃は、夜明よあ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
錫杖しやくぢやう法螺ほらとを伴奏楽器とした。唱文は家の鎮斎を主として、家を脅すもの、作物を荒す物などを叱る詞章であつた。其くづれの祭文が、くどきめいたものであつた。其傾向が、他の条件と結合した。
地蔵尊ぢざうそんが、まへはうから錫杖しやくぢやういたなりで、うしろつゞいたわたし擦違すれちがつて、だまつてさかはうもどつてかるゝ……と案山子かゝしもぞろ/\と引返ひきかへすんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その夥多おびたゞしい石塔せきたふを、ひとひとつうなづくいしごとしたがへて、のほり、のほりと、巨佛おほぼとけ濡佛ぬれぼとけ錫杖しやくぢやうかたをもたせ、はちすかさにうつき、圓光ゑんくわうあふいで、尾花をばななかに、鷄頭けいとううへ
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)