錢湯せんたう)” の例文
新字:銭湯
もちおもりのする番傘ばんがさに、片手腕かたてうでまくりがしたいほど、のほてりに夜風よかぜつめたこゝろよさは、横町よこちやう錢湯せんたうから我家わがやかへおもむきがある。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それならまだしもだが、やゝともすると三日みつか四日よつかまる錢湯せんたう敷居しきゐまたがずにすごして仕舞しまふ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なすも知れずとうはさしながら錢湯せんたうへ行しに朝湯も冬は込合こみあひ淨瑠璃じやうるり念佛ねんぶつ漫遊唄そゝりうたなかに一段へ足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まだ可笑をかしいことがある、ずツとあとで……番町ばんちやうくと、かへりがけに、錢湯せんたう亭主ていしゆが「先生々々せんせい/\ちやうひるごろだからほか一人ひとりなかつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぞんじのとほり、品行方正ひんかうはうせいてんは、ともだちが受合うけあふが、按摩あんまいたつては、しかだんじて處女しよぢよである。錢湯せんたうでながしをつても、ばんとうにかたさはらせたことさへない。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いはさんが仕事場しごとばから——行願寺内ぎやうぐわんじないにあつた、——路地ろぢうらの長屋ながやかへつてると、なにかものにそゝられたやうに、しきり樣子やうすで、いつもの錢湯せんたうにもかず、さく/\と茶漬ちやづけまして
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)