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錢湯
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せんたう
持おもりのする
番傘に、
片手腕まくりがしたいほど、
身のほてりに
夜風の
冷い
快さは、
横町の
錢湯から
我家へ
歸る
趣がある。
夫ならまだしもだが、
稍ともすると
三日も
四日も
丸で
錢湯の
敷居を
跨がずに
過して
仕舞ふ。
なすも知れずと
噂しながら
錢湯へ行しに朝湯も冬は
込合淨瑠璃念佛漫遊唄中に一段へ足を
まだ
可笑しい
事がある、ずツと
後で……
此の
番町の
湯へ
行くと、かへりがけに、
錢湯の
亭主が「
先生々々」
丁ど
午ごろだから
他に
一人も
居なかつた。
ご
存じの
通り、
品行方正の
點は、
友だちが
受合ふが、
按摩に
至つては、
然も
斷じて
處女である。
錢湯でながしを
取つても、ばんとうに
肩を
觸らせた
事さへない。
岩さんが
仕事場から——
行願寺内にあつた、——
路地うらの
長屋へ
歸つて
來ると、
何かものにそゝられたやうに、
頻に
氣の
急く
樣子で、いつもの
錢湯にも
行かず、さく/\と
茶漬で
濟まして