銀鱗ぎんりん)” の例文
世界ニ類ナキ銀鱗ぎんりん躍動、マコトニ間一髪、アヤウク、ハカナキ、高尚ノ美ヲ蔵シ居ルコト観破つかまつリ、以来貴作ヲ愛読シ居ル者ニテ、最近
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
みねにじである、たににしきふちである。……信濃しなのあき山深やまふかく、しもえた夕月ゆふづきいろを、まあ、なんはう。……ながれ銀鱗ぎんりんりうである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三方みかたはらをあとにしながら下に月光の山川さんせんを見、あたりに銀鱗ぎんりんの雲を見ながら、鞍馬くらま竹童ちくどうわしの上からさけぶのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかもいうところの片側かたがわ町であった。反対の側は神田川で、今、銀鱗ぎんりんを立てながら、大川のほうへ流れている。下流に橋が見えていたがそれはどうやら和泉橋いずみばしらしい。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
楽しげに銀鱗ぎんりんひるがえす魚族いろくずどもを見ては、何故なにゆえに我一人かくは心たのしまぬぞと思いびつつ、かれは毎日歩いた。途中でも、目ぼしい道人どうじん修験者しゅげんしゃの類は、あまさずその門をたたくことにしていた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
川底の小石がすきとおって見える、小魚が銀鱗ぎんりんの背を光らして横ぎる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
道はすでに相国寺しょうこくじの大路端れに出ていて、半町ほど先には、ひろい川面かわもの水が銀鱗ぎんりんを立てて、水に近いやかた築地ついじにまでその明るい光をぎらぎら映していた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡掛わたりかけた橋の下は、深さ千仭せんじん渓河たにがわで、たたまり畳まり、犇々ひしひし蔽累おおいかさなつた濃い霧を、深くつらぬいて、……峰裏みねうらの樹立をる月の光が、真蒼まっさおに、一条ひとすじ霧に映つて、底からさかさ銀鱗ぎんりんの竜の
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)