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那樣事
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そんなこと
まあ
那樣事は
措いて、
其時船の
中で、
些とも
騷がぬ、いやも
頓と
平氣な
人が
二人あつた。
美しい
娘と
可愛らしい
男の
兒ぢや。
※弟と
見えてな、
似て
居ました。
『
可けません、
可けません!
那樣事を
爲せても
可いとは
誰からも
言付かりません。
御存じでせう。』
那樣事は
知らぬな。
私は
目下の
空模樣さへお
前さんに
聞かれたので、やつと
氣が
着いたくらゐぢやもの。
然云ふ
譯では
無いのです、
其れは
貴方が
苦痛を
嘗めて、
私が
嘗めないといふことではないのです。
詮ずる
所、
苦痛も
快樂も
移り
行くもので、
那樣事は
奈何でも
可いのです。
徳義上だとか、
論理だとか、
那樣事は
何も
有りません。
唯場合です。
即ち
此處に
入れられた
者は
入つてゐるのであるし、
入れられん
者は
自由に
出歩いてゐる、
其れ
丈けの
事です。
また
生命を
介はずに
乘ツた
衆なら、
風が
吹かうが、
船が
覆らうが、
那樣事に
頓着は
無い
筈ぢやが、
恁う
見渡した
處では、
誰方も
怯氣々々もので
居らるゝ
樣子ぢやが、さて/\
笑止千萬な