運命さだめ)” の例文
それが私の身にかかっている命の預言、それが私のこの世の運命さだめ。(二三度機を織り)私はどうしてもあの塔へ行く気にはなれぬ。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女はただの一日一刻のあいだにもその運命さだめがどう変るかも分りませぬし、変るものもさだめのつねのようにおもわれます。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そのお方は、人の生命を司る運命さだめと、宿縁をないがしろにする者のかなしみとを、後代のものに示さんとおぼし召されて、これなる竜の手をお遺しなされた。
貴方の幻だけはかたく胸に抱きしめて——あの気高くも運命さだめはかなき海賊コルサール、いいえ、男爵海軍少佐テオバルト・フォン・エッセンは、死にさえも打ちって
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼にはこの生きる運命さだめが死ぬ運命さだめよりも悲しかった。怒りの火炎が眼に燃えて、脣が反った。
(新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
それから、その永遠と対比された地上のなべてのものの運命さだめをもはっきりと見ておられる。
世間の噂は皆実正まことなり。われと吾身に計り知られぬ罪業を重ねし身。天下、身を置くに処無し。流石さすが法体ほつたいの身の、かゝる処に来合はせし事、天の与ふる運命さだめにやあらんずらん。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
左様さよう——そなたの人相、気魄きはくをうかがうに、一かたならぬ望みを持つものと観た——と、いうても驚くことはない——わしは、自体他人の運命さだめうらのうて、生業なりわいを立てるもの——何も
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
今の我に世なく神なくほとけなし運命さだめするどき斧ふるひ来よ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
「いっそ、目白めじろがよかろ。目白になってなたの丘の竹藪たけやぶで、日がないちにちき暮すことじゃ。そいでん、子供たちにつかまって、かごんなかに入れられてしまえば、また鶏どんと同じ運命さだめになる道理じゃ」
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
ひかりを慕ふ身なれども運命さだめかなしや老鳥おいどり
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
むご運命さだめのいたましき宝物ほうもつは、おもむろに
「これも、運命さだめで、ござりましょう」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
つじ馬車と四輪の馬車と同じ運命さだめ
そのふしぎな心の運命さだめを織る。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
能登のとはた打つ運命さだめにや生れけん
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
目的めあて知らねば運命さだめのまゝに
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
影もさびしき故国の運命さだめ
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そを棄てて運命さだめ啓示さとし
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
わが運命さだめを知りしのち
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
恨みなはてぞ世の運命さだめ
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
世の運命さだめをし思ふにも。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
運命さだめ悲しや
蛇苺 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
それが私の身にふりかかっている、命の預言! この世の運命さだめ……そんなことがあるものか、私は長く長く此処に居て、五色の糸を織る身じゃもの。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いいえ、そのことについては、私、少しもお怨みはしておりませんの、何事も、運命さだめですわ。それに、父の方だって、私の知らない間に、大変悪いことをして……」
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
運命さだめ知らぬあやつりの糸——これも離在する雲竜二刀がかげにあってひくのであろうか。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
二度と出られぬ煉瓦の地獄じゃ。「違う違う」と云い訳したとて。それが、そのまま「キの字」の証拠と。今も昔も変らぬ運命さだめじゃ。放火狂じゃと診察みこみをつけて。八百屋お七を解剖したらば。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
みづからの運命さだめ知りつゝなほ高くのぼらむとする人間ひとよ切なし
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
秋風やとある女の運命さだめ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
運命さだめ? さなり
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
運命さだめの車いと暗き
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
助けられ、あなたにお逢い致したればこそ、こういう運命さだめにもなりました。このように思えば悪侍の石川五右衛門というあの男も私には悪く思われませぬ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
救いを求める人と、救う目的でさがす人とが一度はこんなに近く寄りながら、たがいに相手を知らずにそのまま過ぎてしまう——これも人間一生の運命さだめを作る小さなはずみのひとつかも知れなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
人間の夢も愛情なさけも亡びなむこの地球ほし運命さだめかなしと思ふ
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
山尾は歩きながらも不思議の運命さだめを、繰り返し胸で思って見た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
黄なる糸運命さだめの糸を
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)