輪飾わかざり)” の例文
その寒暖計に小き輪飾わかざりをくくりつけたるは病中いささか新年をことほぐの心ながら歯朶しだの枝の左右にひろごりたるさまもいとめでたし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その片隅かたすみ印袢天しるしばんてん出入でいりのものらしいのが、したいて、さい輪飾わかざりをいくつもこしらへてゐた。そば讓葉ゆづりは裏白うらじろ半紙はんしはさみいてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しんとして、神寂かみさびた森の中の、小さな鳥居に階子はしごをかけて、がさり、かさこそと春の支度だろう。輪飾わかざりを掛けていたっけ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして出口の方へこうとして、ふと壁を見ると、今まで気が附かなかったが、あっさりした額縁にめたものが今一つ懸けてあった。それにいばら輪飾わかざりがしてある。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
墓に詣でゝは、石上に殘れる輪飾わかざりの一葉を摘みて、夾袋けふたいの中にをさめつ。
ちょっと輪飾わかざりうしろに附いて居ります。
その片隅かたすみ印袢天しるしばんてんを着た出入でいりのものらしいのが、下を向いて、さい輪飾わかざりをいくつもこしらえていた。そば譲葉ゆずりは裏白うらじろと半紙とはさみが置いてあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二宮尊徳にのみやそんとくをうまつれる報徳神社はうとくじんじやまうづ。鳥居とりゐ階子はしごして輪飾わかざりをかくるさまなど、いたく神寂かんさびたり。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それより無言むごんにて半町はんちやうばかり、たら/\とさかのぼる。こゝにひるくら樹立こだちなかに、ソとひと氣勢けはひするを垣間かいまれば、いし鳥居とりゐ階子はしごかけて、輪飾わかざりくるわか一人ひとり落葉おちばおきな二人ふたりあり。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがてぞ、内賑うちにぎやかもんのひそめく輪飾わかざり大玄關おほげんくわんより、絹足袋きぬたびかる高廊下たからうかく。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)