踏出ふみだ)” の例文
ぐるツと取卷とりまかれてはづかしいので、アタフタし、したいくらゐ急足いそぎあし踏出ふみだすと、おもいものいたうへに、落着おちつかないからなりふりをうしなつた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そう云って一人を短艇へ残し、船長は真先まっさき梯子タラップを登って行った。——甲板へ一歩踏出ふみだしたとたんに、人々は思わず息詰るような光景を見た。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はなしに浮たて歩行し事故お花は餘程草臥くたびれたる樣子なり友次郎とても久敷ひさしく京大坂に逗留し今日踏出ふみだしに大道を歩行たる事なれば今宵は早く共此宿にとまらんと云けるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
娘が出る。腰痛ようつうでなければ婆さんも出る。奇麗に掃いた禾場うちばに一面の穂麦をいて、男は男、女は女と相並んでの差向い、片足かたあし踏出ふみだし、気合を入れて、一上一下とかわる/″\打下ろす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
帽子を取って、一歩廊下に踏出ふみだした東野南次は、ギョッとして立止りました。
にんをおろしたらしくると、坂上さかがみも、きふには踏出ふみだせさうもなく、あし附着くツついたが、前途さきいそむねは、はツ/\と、毒氣どくきつかんでくちから吹込ふきこまれさうにをどつて、うごかしては
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たもとを、はつとみだすと、お納戸なんど扱帶しごきめた、前褄まへづましぼるばかり、淺葱縮緬あさぎちりめん蹴出けだしからんで、踏出ふみだ白脛しらはぎを、くささきあやふめて……と、吹倒ふきたふされさうに撓々たわ/\つて、むねらしながら
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)