豪勢ごうせい)” の例文
ぼくの乗せて頂いたのも、華奢きゃしゃ白塗しろぬりのリンカン・ジェフアで、車内に、ラジオも、シガレット・ライタアも装備そうびしてある豪勢ごうせいさでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
左様さよう豪勢ごうせいな(しかし不思議な)人気を背負しょっている金青年の心は一体誰の上にあったかというと、それは君江の上にあった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
吉原よしわらだといやァ、豪勢ごうせいびゃァがるくせに、谷中やなか病人びょうにんらせだといて、馬鹿ばかにしてやがるんだろう。伝吉でんきちァただの床屋とこやじゃねえんだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「よウ、京都の葵祭あおいまつりにも人出ひとではあるが、この甲斐かい山奥やまおくへ、こんなに人間があつまってくるたあ豪勢ごうせいなもンだなあ……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あきれたものだのとわらつておまへなどは其我そのわがまゝがとほるから豪勢ごうせいさ、此身このみになつては仕方しかたがないと團扇うちはつて足元あしもとをあふぎながら、むかしははなよのひなし可笑をかしく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いし人形にんぎようなどをてゝ、豪勢ごうせいしめしてゐたといふことが、ふる書物しよもつにでてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「えええッ。そいつは豪勢ごうせいですね。いや砲弾ばかりではない。空中からして、日本空軍のまきちらす重爆弾が雨下命中したらば、どうなりますか」
「おめえは富士の山大名やまだいみょうとか、野武士のぶし総締そうじめとかいわれて、豪勢ごうせいなはぶりだってことをうわさに聞いていたが」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あめわずに、おせんぼうぱしったな豪勢ごうせいだ。こんな鉄錆てつさびのようなかおをしたおいらより、油壺あぶらつぼからたよなおせんぼうほうが、どれだけいいかれねえからの。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
こちらのき出しは豪勢ごうせいだ。七面鳥のサンドウィッチに、ウィスキーの角壜かくびん、煙草はMCCだ。
沈没男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わずか数秒間のすこぶる豪勢ごうせいな火の見世物として、附近の魚類をおどろかしたのを最後に、貨物船モンパパ号の形はうせ、空中から落ちくる船体の破片も、漂流ひょうりゅうする屍体したい
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)