見兼みか)” の例文
るに見兼みかねてわたくし産土うぶすな神様かみさまに、氏子うじこ一人ひとりんな事情ことになってりますから、うぞしかるべく……と、おねがいしてやりました。
山茶花さざんかの枝をわざと持って、悪く気取って歩行あるくよりはましだ、と私が思うより、売ってくれた阿媽おっかあの……栄螺さざえこぶしで割りそうなのが見兼みかねましてね
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが深切気のあるおやぢで、自分ののらくらして居るのを見兼みかねて、せめて弟子取りでもしろと、勧めてれた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
その取ったのも訳があるので、ロシア政府がチベットに対しいろいろの術策じゅっさくを施すのを見兼みかねて、チベット政府の意向を探るために土地を取ったらしい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
臨終の席につらなった縁者の人々は、見るに見兼みかねて力一杯に押えようとするけれど、なかなか手にえなかった。そして鐘のしずむと共に病人の脈も絶えた。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
久米君は見兼みかねて鉄条綱の向から重い書物の包と蝙蝠傘とを受取ってくれたので、私は日和下駄の鼻緒はなお踏〆ふみしめ、つむぎ一重羽織ひとえばおりの裾を高く巻上げ、きっと夏袴の股立ももだちを取ると
この有様を見るに見兼みかねて、猛然として演壇に起ったのは、よわい七十に余る老ドクトルである、彼は打ちしおれたる聴衆の精神に、一道の活気を与えんがために、愁いを包んで却って呵々大笑し
太陽系統の滅亡 (新字新仮名) / 木村小舟(著)
がんがんと釘が真白な、しなやかな手頭を貫いて、下の白木の十字架に打ち立つ時、一同周囲に見守っている親、親戚は等しく見るに見兼みかねて眼を掩うた。中にも父親は歯を喰いしばって顔をそむけた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
大原のスープをすすさまは随分無作法なり。主人の中川見兼みかねけん
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
見兼みかね給ふは御道理ごもつともなれども我等事うまれ付無能むのうゆゑ是非なくかくくらし候まゝ日々まゐらする物も心に任せず右さへ御厭おいとひなくば假令たとへ此上何時迄居らるゝとも決して御氣遣ひに及ばずとて押返おしかへしければ靱負ゆきへかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それはかく、あのときわたくしはは断末魔だんまつま苦悶くもんさまるに見兼みかねて、一しょう懸命けんめいははからだでてやったのをおぼえています。
ギャルポという人は見兼みかねてお気の毒だけれどもあの裸馬にお乗りになったらどうか、くらがあれば誠に都合が好いけれども鞍がないからあなたに乗ることが出来るかどうかといいますから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)