かか)” の例文
その面色、その声音こわね! 彼は言下ごんか皷怒こどして、その名にをどかからんとするいきほひを示せば、愛子はおどろき、狭山はおそれて、何事とも知らず狼狽うろたへたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
外へ出ると、そこらの庭の木立ちに、夕靄ゆうもやかかっていた。お作は新坂をトボトボと小石川の方へ降りて行った。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
真黒まつくろに煤びた屋根裏が見える、壁側に積重ねた布団には白い毛布がかかつて、それに並んだ箪笥の上に、枕時計やら鏡台やら、種々いろんな手廻りの物が整然きちんと列べられた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
仄白ほのじろい夜の雪ばかりで誰の影も見えません。しばら佇立たたずんでおりましたが、「晴れたな」と口の中で言って、二あしあし外へ履出ふみだして見ると、ぱらぱら冷いのが襟首えりくびのところへかかる。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うっすり路へかかった水を踏んで、その濡色ぬれいろ真白まっしろに映って、蹴出けだづまからんだのが、私と並んで立った姿——そっくりいつも見る、座敷の額のに覚えのあるような有様だった——はてな
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書画箋や鼠かかぶるをおきて聴くに穏止おだやみまた引き裂きぬ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鬚髪しゅはつ下垂して肩にかかり面にかむる。
宮はすかさずをどかかりて、我物得つと手に為れば、遣らじと満枝の組付くを、推隔おしへだつるわきの下より後突うしろづきに、𣠽つかとほれと刺したる急所、一声さけびて仰反のけぞる満枝。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そこには萌黄もえぎきれかかった箪笥のうえに新しい鏡台などが置かれてあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
貫一かんいつさん」とひ寄らんとするを、薄色魚子うすいろななこの羽織着て、夜会結やかいむすびたる後姿うしろすがたの女はをどかかつて引据ひきすうれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)