膏血こうけつ)” の例文
こんな矛盾した社会は顛覆てんぷくさせねばならぬ。暴動をおこして、人民の膏血こうけつをしぼっている奴らをハエのようにたたきつぶさねばならぬ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
農民の膏血こうけつをしぼって得られたものであり、それへの反感であった、とか、彼の右腕は世間を欺瞞しているから、というような。
もとよりその財貨宝玉は、すべて悪政の機関からくりからしぼりとった民の膏血こうけつにほかならぬ。……これを奪うのは天の誅罰ちゅうばつといえなくもあるまい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
看よ看よいかにかの露国がその人民を鞭撻べんたつし、その膏血こうけつを絞るも、限りあるの財本はもって限りなきの経費につるあたわず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
山阜さんぷのごとし、百けいに散ず、その蛻骨の時に遇えば生竜のごとし、あるいはいわく竜常にこの処に闘う、膏血こうけつ流水のごとしと。
そして、「狡猾こうかつにも、請負業者中のスキャップ、吸血鬼ともいうべき暴力団長と結託して、哀れなる沖仲仕の膏血こうけつをしぼる」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そういう豪華版は、何の力によって招来したのかといえば、これすべて、一億に近いイネ州の人民の膏血こうけつによって、もたらされたものであった。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
他人の膏血こうけつによる富を積んで、おのれが安楽に暮さんとする、その安楽が、世の人の考える如く安楽なものでございましょうか、汗を流して終日働く人たちのみが
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただしその花は血に咲いた花だ! 民の膏血こうけつに咲いた花だ! なんと卜伝、そうではあるまいかな
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こういう傾向は、確かに近代になって著しく見えて来たようである。この際独り憐れむべきは、資本家の懐を肥やすがために、政府より膏血こうけつを絞り取らるる各国の人民である。
世界平和の趨勢 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
同君が外界の事象と四つに取組むと同時に、こうした自己の内部のものと必死に取組み合って、蒼白い、必死の膏血こうけつらし続けていることがその絵によって窺われますから……。
挿絵と闘った話 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
無辜むこの犠牲とはなんだ、社会に生きているものに、誰一人労働者の膏血こうけつを絞って、うまい物を食ったり、温い布団の上に寝たりしていないものはない。どこへ投げたって好いと云うのだ。
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もっとも小学をえ、中学にって、ちょうど高等学校に入っていたその学資は、父が膏血こうけつを絞ったものであることはいうまでもないが、従姉妹達が銘々、自分の境遇を悲しむ余りに
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
陥穽おとしあなにかけた上、膏血こうけつを絞りとるもので、最も不埒な悪徳と云うべきだ
兵士と女優 (新字新仮名) / 渡辺温オン・ワタナベ(著)
あの金は細民の膏血こうけつを絞った因縁のある金で、一銭といえども無駄には出来ないのです。せめて元金の何割でも何分でも、出来るだけ多く、気の毒な預金者達に返してやらなければならなかったのです。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
『まったく、諸国から出た皇帝が立ち皇帝に亡ぼされ、そのたびに何億という人民の膏血こうけつで築かれた皇城が一夜の灰燼かいじんになってしまっている』
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆえにかの租を食らい、税を飲み、他人の膏血こうけつを絞りて自家の口腹肉欲を飽かしむるごとき閑生活をなすものはあらず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
百姓たちは、四斤よんきん砲一発、いくらという値を知ってから、どかあん、という音を聞くと、自分たちの膏血こうけつがぶッぱなされるように、気がひけた。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
抗するにも、訴えるにも、何ら、法の庇護をもたないこの時代の無力の民は、どんな苛斂誅求かれんちゅうきゅうにも服すしかない。膏血こうけつをしぼっても、出さねばならない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いいえ、多くの女に贅沢をさせるために、百姓たちの膏血こうけつをしぼることは、隣国の国司こくしにまで聞えています。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「笑わすな。貢税みつぎ膏血こうけつでぶよぶよ肥っている廟堂びょうどうの豚めが。梁山泊で赤恥かいた上、ここへ来てまで尻の穴で物をいう気か。人民の敵とは、うぬらのことだ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに、黄巾の残党で、何儀かぎ黄邵こうしょうという二頭目は、羊山ようざんを中心に、多年百姓の膏血こうけつをしぼっていたが
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「国財は、民の膏血こうけつから産れた国家の物である。私にこれを焼棄しょうきするは、天を怖れぬものだ」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太守面たいしゅづらをしているのみか、国税もすべて横領し、むすめの嫁入り支度といっては、民の膏血こうけつをしぼり、この天下多難のときに、眷族けんぞくそろって、能もなく、大糞ばかりたれている。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その労働力から膏血こうけつまでを、しぼり上げてするのでなければ、行われない仕事であった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この老猪ろうちょめ、なにをいうか。良民の膏血こうけつをなめ喰って脂ぶとりとなっている惰眠だみんの賊を、栄耀えいようの巣窟から追い出しにきた我が軍勢である。——眼をさまして、く古城を献じてしまえ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんと、この北国の貧村と、痩せたる民の膏血こうけつで作った第宅ていたくの見すぼらしさよ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)