腰巻こしまき)” の例文
腫物はれもの一切いっさいにご利益りやくがあると近所の人に聴いた生駒いこまの石切まで一代の腰巻こしまきを持って行き、特等の祈祷きとうをしてもらった足で、南無なむ石切大明神様
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
こんな所でも人間にう。じんじん端折ばしょりの頬冠ほおかむりや、赤い腰巻こしまきあねさんや、時には人間より顔の長い馬にまで逢う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五百はわずか腰巻こしまき一つ身にけたばかりの裸体であった。口には懐剣をくわえていた。そして閾際しきいぎわに身をかがめて、縁側に置いた小桶こおけ二つを両手に取り上げるところであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
中央ちうあうけやきはしらの下から、髪の毛のいゝ、くつきりと色の白い、面長おもながな兄の、大きなひとみきんが二つはいつた眼が光つた。あきらにいさんは裸体はだか縮緬ちりめん腰巻こしまき一つの儘後手うしろでしばられて坐つて居る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
きはめてせま溝板どぶいたの上を通行の人はたがひに身をなゝめに捻向ねぢむけてちがふ。稽古けいこ三味線しやみせんに人の話声はなしごゑまじつてきこえる。洗物あらひものする水音みづおときこえる。赤い腰巻こしまきすそをまくつた小女こをんな草箒くさばうき溝板どぶいたの上をいてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
仕丁 腰巻こしまき、腰巻……(手伝いかかる。)
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三丁ほどのぼると、向うに白壁の一構ひとかまえが見える。蜜柑みかんのなかの住居すまいだなと思う。道は間もなく二筋に切れる。白壁を横に見て左りへ折れる時、振り返ったら、下から赤い腰巻こしまきをした娘があがってくる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)