綸旨りんじ)” の例文
そしてまさか、前執権ぜんしっけん妹聟いもとむこの高氏のふところにも、後醍醐の綸旨りんじがかくされていたなどとは、疑ってみる者すらもなかったのだ。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
撰者は宗良親王、弘和元年十二月三日長慶天皇の叡覧えいらんにそなえた。全部二十巻。叡覧に供える前、弘和元年十月、勅撰集に擬せられる旨の綸旨りんじを賜わった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
藩士尊攘派が追われたのちの京都へ、あくる文久四年(元治げんじ元)正月将軍は再び上洛し、右大臣従一位の叙位をうけ、朝廷に十五万俵を献じ「公武一和顕然」たるものだった。二月の綸旨りんじ
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
先年「綸旨りんじ」と金蒔絵で表書きした黒塗りの空箱を発見したというほどの旧家であるから、無論この村の草分けの一つとして、その祭れるオクナイ様が三四百年経っていても差し支えはない。
天下の諸侯に綸旨りんじのなンのと
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
後醍醐はその経過やら綸旨りんじの上からも、御自身、軍の御指揮者たるのかたちで、公卿すらも弓箭きゅうせんを取って陣頭に出ていたのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東国の逆乱もすみやかな静謐せいひつを見、相共によろこばしい。さっそく将士の軍功の施与せよは、綸旨りんじの下に、朝廷でおこなうであろう。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちどは鎌倉にとらわれた前科の身だ。絶体絶命とみたら、いつでも護持する綸旨りんじを灰として、自身は毒を仰服あおぐ決意を秘めていたのである。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし岩松吉致は、じきじきの拝謁をえたうえに、望みの綸旨りんじもたまわって、こんどの密使の役目は十二分といっていいほどすませていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さきに、岩松家へ賜わった綸旨りんじをたずさえて、吉致の兄、岩松経家が、あれからすぐ関東へ急下して行った由を、つたえて。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがここへ来て、九州の足利直冬は、南朝からうけた綸旨りんじを名分に、正平八年の夏、大挙して都へ攻めのぼってきた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綸旨りんじをいただいてのことだ。かしこくもわが足利家へ、かくべつな、おたのみたるによって、ここに義戦の旗を上げる。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綸旨りんじを降しおかれ、隣境の乱あらば討つべし、皇土をみだし、民を苦しめるの暴国あらばおもむいて平定せよと、不才謙信に身にあまる御諚ごじょうであった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毛利元就もうりもとなりも然り、上杉謙信うえすぎけんしんも然り、本願寺も然り、みな皇室に献金もし、御造営にも手つだい、綸旨りんじにも恭順きょうじゅんしている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うけたまわれば、弁ノ殿には、これより紀州きしゅう高野こうや播磨はりま大山寺たいせんじ伯耆ほうき大社たいしゃ、越前の平泉寺などへ、内々の綸旨りんじをおびて、忍びやかに御廻国のよし。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、その決意は、勅使の“御夢”の告げや綸旨りんじに感泣のあまり無方針に起ち上がろうとするのでは決してない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綸旨りんじをさずけたり、じきじき、おん大事をかたるにはやや心もとないお気もちであったのかもしれなかった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——げに、おそれ多いが、すでに、やごとなき辺りより、内々の綸旨りんじも賜わっておる儀なので」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
告文こうもんとは、どんな意味を持つものやら。みことのり、綸旨りんじ、それともちがいましょうか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この吉致は、かつて隠岐の島へ潜入して、後醍醐の脱出をたすけ、また綸旨りんじをもたまわって、そのごは族党の宗家そうけ新田義貞へたいして、しきりに何かの画策をすすめていた者。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ではないが、身に帯ぶる、みかどの綸旨りんじが気がかりなのだ。身は、いかにともなれ、万一綸旨が六波羅の手になど渡らば、こたびこそは、正中ノ二の舞ぐらいな騒ぎでは事すまぬ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや上洛じょうらくして、自己の三軍のを誇示し、綸旨りんじを仰ぎ、将軍や管領を強迫し、もって八道へ君臨しようという野望家は、ひとり先にその途上で挫折ざせつした今川義元があるばかりでなく
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝廷では諸大寺の座主ざすから天皇ご自身までも、連日にわたって戦勝祈願の大威徳法の修法をこらし、また再度の綸旨りんじを諸国に発して、逆賊尊氏の必滅ひつめつを天地にちかっておられるとのこと。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしながら、綸旨りんじを拝して、将卒共に、勇気百倍いたしました。きっと一日も早くせ上りまする。そして天下の逆賊をはらい、君辺くんぺんの害を清めて、昭々しょうしょう御代みよを恢復せずにはおきません。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さはなくて、恩賞の、やれ綸旨りんじのと、事々しく、はしクレばかりくれくさる」
あしたに夕に、綸旨りんじが変るような乱脈さを見すかして、たちまち、にせ綸旨が流行はやり出した。恩賞の偽地券にせちけんに、天皇の名をかたって、地方人の土地をあざむきとる悪党たちが横行しだして来たのである。
なおまた、直義討伐とうばつ綸旨りんじもあわせて降下された。後村上のおん名である。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われらには一こう合点がてんが相なりません! んぬる元弘げんこうの年の初め、義貞以下、われら端武者はむしゃにいたるまで、綸旨りんじをいただき、かたじけなしと、心骨しんこつに忠誠を誓ッてからは、関東の野には、かばねを積み
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主上より綸旨りんじをもって信長にさとし給わらんものと、だいぶ烈しい運動を試みたらしゅうございますが、それも勅許になる見込みなく、近頃ではもっぱらただ民力にありとなして、諸国を勧進かんじん
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてすぐ、かねて賜わっていた綸旨りんじと、願文がんもんを読みあげた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後醍醐朝廷直々じきじき綸旨りんじ
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綸旨りんじに畏れ多し)
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綸旨りんじ