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給金
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きうきん
よろしう
御座んす
慥かに
受合ひました、むづかしくはお
給金の
前借にしてなり
願ひましよ、
見る
目と
家内とは
違ひて
何處にも
金錢の
埓は
明きにくけれど
一年と
定めたる
奉公人の
給金は十二箇月の
間にも十兩、十三
箇月の
間にも十兩なれば、一
箇月はたゞ
奉公するか、たゞ
給金を
拂ふか、
何れにも一
方の
損なり。
其外の
不都合計るに
遑あらず。
志しは
嬉しけれど
歸りてからが
女の
働き、
夫れのみか
御主人へは
給金の
前借もあり、それッ、と
言ふて
歸られる
物では
無し、
初奉公が
肝腎、
辛棒がならで
戻つたと
思はれても
成らねば
秋より
只一人の
伯父が
煩ひて、
商賣の
八百や
店もいつとなく
閉ぢて、
同じ
町ながら
裏屋住居に
成しよしは
聞けど、六づかしき
主を
持つ
身の
給金を
先きに
貰へえば
此身は
賣りたるも
同じ
事