つく)” の例文
半七が二日もつづけてくるので、彼女もなんだか不安らしい眼付きをしていたが、それでも笑顔をつくって愛想よく挨拶した。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もともと、僕のこのみからして、あの亡霊の顔つくりに、沙翁の顔を引き写したのですが、それが廻転している、幡江の眼を誤らせたのでしょう。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
なぜならば上等社会の婦女子は何にも仕事がないのです。ただ髪を洗うとか鏡をのぞいておつくりをするのが自分の仕事である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
解いておしまいなさい。リザヴェッタ、もう出るのはやめにしましょう。……そんなにおつくりをするには及ばなかったね
物腰のしおらしい、背のすらりとした、黒目勝の、つくれば粧るほど見勝みまさりのしそうな御容貌かおだち。地の御生おうまれでないということは美しい御言葉で知れました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのひとのお顏とそつくりのおつくりをして見せて、あなたをよろこばして上げたいと考へたからなのよ、わたくしだつて頬べにをつければ頬はあかくなるし
はるあはれ (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
此人は衣装なりつくらず外見みえも飾らずごく朴実律義で、存魂ぞつこん嬢様に思込んでゐたがちつとも媚諛こびへつらふ容子を見せなかつた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
葉子は半ばあきれた顔をしていたが、北山やお八重が羨望せんぼうの目で、どこに陰影一つないつくり立ての葉子の顔を見ていたので、庸三はなおさら虫が納まらなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ひと頃、やはり近藤夫人のめいで、竹子という娘なども、義兄をめぐって、オテイちゃんとの恋争いの図を見せていた。竹子という女性は、いつもこってりと、見るからに濃艶なつくりをしていた。
と夜具をりにかかる女房にょうぼうは、身幹せいの少し高過ぎると、眼のまわりの薄黒うすぐろく顔の色一体にえぬとは難なれど、面長おもながにて眼鼻立めはなだちあしからず、つくり立てなばいきに見ゆべき三十前のまんざらでなき女なり。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
人品じんぴんを落すほどにつくッて、衣服もなりたけいのをえらんで着て行く。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今はた色はつくらねど
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
蒼白くつくった顔は更に蒼くなった。おびただしく出血した傷口はすぐに幾針も縫われたが、その経過は思わしくなかった。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
奥様は朝につくり、晩にみがき、透き通るような御顔色の白過ぎて少許すこしあおく見えるのを、頬の辺へはほんのり紅をして、身のたけにあまる程の黒髪は相生あいおい町のおせんさんに結わせ
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
娘の父母はその物品を娘のもとへ持って来て「お前のその櫛は大分古くなって居るから其櫛それを棄ててこの新しい良いので梳くがよい。ここに良い油もあるからこれで立派におつくりするがよい」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「番町の殿様お待ちかねでござります」と、女房は笑顔をつくった。「すぐにお連れ申しましょうか」
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分は嫁に遣らるるためにおつくりさせられるとは知らずにおつくりする者もありますが、どうかすると怜悧りこうな娘は悟って、今まで機嫌の好かった娘はそれと悟って悲しそうに泣き立てる者もあるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「おあがり下さいまし。毎日お寒いことでございます」と熊蔵はわざと笑顔をつくって挨拶した。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女は物詣でのためにきょうは殊更に清らかにつくっていた。紅や白粉おしろいもわざとうすくしていた。しかもそれが却って彼女の艶色を増して、玉のようなおもてはいよいよその光りを添えて見られた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
子供のないのを幸いにせいぜい派手につくっていました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女は努めて笑顔をつくって、愛想よく挨拶した。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
栄之丞も無理に笑顔をつくった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)