神通力じんつうりき)” の例文
かのゲロン・リンボチェというお方は神通力じんつうりきを得て居って、人の心に思うて居る事またこれはどういう人であるということを見分みわけもし
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
こう言う大慈悲心を動かした如来はたちまち平生の神通力じんつうりきにより、この年をとった除糞人じょふんにんをも弟子でしかずに加えようと決心した。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
神通力じんつうりきをもっているのじゃ。わしひとりの力で、この世界を、まったくちがったものにすることができる。そういう神通力をな。ウフフフフフ。
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おまえらもすでに神通力じんつうりきそなえているらしいのに、なぜかの妖怪どもに今まで屈伏していたのだ」と、李は訊きました。
なぜかならいくら風のように速い深谷であっても、神通力じんつうりきを持っていないかぎり、そんなに早くグラウンドを通り抜け得るはずがなかったから。
死屍を食う男 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
で、わたくしは一しょう懸命けんめいふか統一とういつはいり、過去かこの一さい羈絆きずなることによりて、一そう自由自在じゆうじざい神通力じんつうりきめぐまれるよう、こころから神様かみさま祈願きがんしました。
あんな神通力じんつうりきを得た曲者では、わたくしがこのことをおしらせにまいったとわかりましたら、もうてまえの命はございませんし、どうしよう、こうしようと
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
つきみちらすのも、案山子かゝしぶのも、からかさくるまも、くるまに、と反身そりみで、しやかまへてつたざうけるがごときも、一切すべて自分じぶん神通力じんつうりきごとくにかんじて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
苦桃太郎にがもゝたらう不審ふしんおこし、我等われら神通力じんつうりきもつてかく飛行ひぎやうしなが
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おれたちは、こんな神通力じんつうりきをもっているのだ。美術品をぬすむぐらいわけはないぞと、おどかしにやってきたのです。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あるラマ、この方は確かに神通力じんつうりきを得て居って、地獄に行くことも出来れば極楽あるいは天堂てんどうにも行くことが出来ると社会から信用されて居る方です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
源平屋島やしまの合戦をみせる。こういう神通力じんつうりきをもっている狐であるから、土地の者も「小女郎さん」とおそれうやまって、決して彼女に対して危害を加えようとする者もなかった。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし金将軍は少しもさわがず、咄嵯とっさにその宝剣を目がけて一口のつばを吐きかけた。宝剣は唾にまみれると同時に、たちまち神通力じんつうりきを失ったのか、ばたりとゆかの上へ落ちてしまった。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ことにチベットではラマと言えば神通力じんつうりきを得て居る人が沢山あるということは俗人の迷信になっておるから、私に対してもやはりその妄信を繰り返してにわかにその情緒を変じた。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
宿に帰って聞けば、きょうは亥子いのこの祭りだという。あまたの小天狗はそれがために出現したらしい。空はやがて時雨しぐれとなった。神通力じんつうりきのない天狗どもは、雨のなかを右往左往に逃げてゆく。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「きみがくるのを、まっていたのさ。きみは、このカシの木の上から、飛びたつにきまっているのだからね。ぼくは、ここにがんばって、きみの神通力じんつうりきのじゃまをしているんだよ。わかったかね。」
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが、おれは神通力じんつうりきをもっているんだ。あの煙突からおちて死んでしまったけれども、見ろ、こうしてちゃんと生きている。きさまの先生の明智なんかにつかまるようなおれじゃない。わかったか。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)