眼中がんちゅう)” の例文
当時日本人は、欧州人おうしゅうじんから見れば、まったく眼中がんちゅうになかったのであります。日本という国さえもみとめられてはいないくらいでした。
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
武士道ぶしどうと言えば、女は眼中がんちゅうにないような風に言われながら、正妻せいさいとなるとなかなか格式を与えて十分な権利を主張せしめている。
女性崇拝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ごうも小生の意志を眼中がんちゅうに置く事なく、一図いちずに辞退し得ずと定められたる文部大臣に対し小生は不快の念を抱くものなる事をここに言明致します。
博士問題の成行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花前はかえって人のいつわりおおきにあきれて、ほとんど世人せじん眼中がんちゅうにおかなく、心中しんちゅうに自分らをまで侮蔑ぶべつしつくしてるのじゃないかとも思われる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かれはその眼中がんちゅう社会しゃかい人々ひとびとをただ二しゅ区別くべつしている、義者ぎしゃと、不義者ふぎしゃと、そうして婦人ふじんのこと、恋愛れんあいのことにいては、いつもみずかふかかんってくのであるが
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「城をとるやつは、兵糧方のこまることなんか眼中がんちゅうにはない。め取りさえすればいいんだから」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最早もうてゝおしまやったか? さればわか手合てあひこひそのこゝろには宿やどらいでその眼中がんちゅう宿やどるとえた。
されば各国公使等の挙動きょどううかがえば、国際の礼儀れいぎ法式ほうしきのごときもとより眼中がんちゅうかず、ややもすれば脅嚇手段きょうかくしゅだんを用い些細ささいのことにも声をだいにして兵力をうったえて目的もくてきを達すべしと公言するなど
女というものは眼中がんちゅうに置かないで、強い男が自分の権利を振り廻すために自分の便利を計るために、一種の制裁なり法則というものを拵えて
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勝島獣医学博士かつしまじゅういがくはくし駒場農学校こまばのうがっこうのまさに卒業そつぎょうせんとする数十名の生徒せいとをひきいて種畜場しゅちくじょう参観さんかんにこられたときは、教師きょうしはもちろん生徒にいたるまで糟谷かすやのごときほとんど眼中がんちゅうになかった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)