発揮はっき)” の例文
旧字:發揮
ありとあらゆる検察力を発揮はっきしないと、烏啼を引捕えることは出来ない。しかし、一体どこから手をつけていいか、分別ふんべつがつかない。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かくのごとき場合においては一時的の感情と見ゆるものがけっしていわゆる一時的感情にあらずして、先天的感情の発揮はっきである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「おれは、自分じぶんのもてる能力のうりょくが、たとえわずかばかりにせよ、これを発揮はっきして、なか人々ひとびとのために、役立やくだてよう。」
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その場合には一見他の民主的な政党と異ならないように偽装ぎそうするが、一度政権を握ったら、右にいうような独裁党の本質を露骨ろこつ発揮はっきするのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
発揮はっきしてどこまでも一生懸命けんめい根気よく遣り直し遣り直して語っているとやがて「出来た」と蚊帳の中から団平の声
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「それは人民を充分強健に教育して、天賦てんぷの愛国心を発揮はっきせしめたからであります。しかし国を出でてより長い事であるからこの頃の事は知りませぬ」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
これがいつもならば泣き虫の蛾次郎、本領ほんりょう発揮はっきしてワアワア泣き声をあげているはずだが、かれも生死の境にたった以上、ふだんよりは相当そうとうにつよい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
色を売りて、人にびるを商売にしている。彼らは嫖客ひょうかくに対する時、わが容姿のいかに相手の瞳子ひとみに映ずるかを顧慮こりょするのほか、何らの表情をも発揮はっきし得ぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さらまたなにかの場合ばあい神々かみがみがはげしい御力おちから発揮はっきされる場合ばあいには荘厳そうごんおうか、雄大ゆうだいもうそうか、とても筆紙ひっしつくされぬ、あのおそろしい竜姿りゅうしをおあらわしになられます。
めいめいが正直に、生き生きと自分の全能力を発揮はっきしつつ、矛盾むじゅん衝突しょうとつ克服こくふくし、それを全体として総合し、統一して行く、そういう過程が何よりもたいせつなのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
だんだん成長せいちょうするにつれて、教育上何等の作意さくいを加えないようにつとめる。丁度科学実験のために、観察かんさつしているような冷静さである。しかし妙なものでそのうちに個性を発揮はっきしてくる。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
機会にあうということで力量手腕を全的に発揮はっきして歴史に名を残すこととなる。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
相川青年は珠子の所謂「探偵さん」の本領を発揮はっきして云った。そして
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そして低脳ぶりを発揮はっきしろとおっしゃるんでしょう」そういって風間光枝は、横眼をつかって、さもにくらしげに帆村をじろりと見た。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もしその十分の一の力を発揮はっきしえたなら、おそらく今日十五、六貫目かんめの我々の五体をもって、米の四、五ひょう朝飯前あさめしまえに二、三里の道を運搬うんぱんすることができよう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かれはかれの予定通りの厳粛さと熱烈さとを十分に発揮はっきすることができたからである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
すぐにユダを発揮はっきし、天邪鬼あまのじゃくをまねる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正岡警部が博識を発揮はっきして云った。
昨日から始まっている日本軍の体当たいあたり機のワシントン爆撃、ニューヨーク爆撃はあれは何だ。わが防禦力ぼうぎょりょく発揮はっきし得ないのはどうしたわけか。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第二層の力を発揮はっきするが、第三段の深さに潜伏せんぷくする力を発揮したことがない心地がする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
アインスタイン博士。この男がもっとどうか力を発揮はっきしてくれるといいんだが、この老ぼれ学者は、わが期待に反した。始めからわせ者だったのか。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)