ひとや)” の例文
我等永遠とこしへのりを犯せるにあらず、そはこの者は生く、またミノス我をつながず、我は汝のマルチアの貞節みさをの目あるひとやより來れり 七六—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
考えれば、まだきのうのように思われるが、実はもう一年まえになった。——あの女が、盗みのとがで、検非違使けびいしの手から、右のひとやへ送られる。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自らその罪を責めて、甘んじてくべき縲紲るいせつを、お鶴のために心弱り、ひとややみよりむしろつらい、身を暗黒に葬ったのを、ひそかに知るは夫人のみ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それぞれのひとやの牢かぎの秘密を心得ているものがお牢屋同心なのでした。かちゃりと源内があけたあとから、物静かにはいっていくと、調べ方にむだがない。
なんじを訴うる者と共にみちるうちに、早く和解せよ。恐らくは、訴うる者なんじを審判人さばきびとにわたし、審判人は下役したやくにわたし、遂になんじはひとやに入れられん。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
是れ館より牢獄に往く道にして、名づけて歎息橋と曰ふとぞ。橋に接する處は即ち牢井らうせいなり。わたどのに點じたる燈火ともしびは僅かに狹き鐵格てつがうを穿ちて、最上層のひとやを照し出せり。
車駕しやが京中に巡幸してみちひとやほとりる時、めしびとたち悲吟ひごん叫呼けうこする声を聞きたまふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ここの厩舎うまやひとやから、縄を解いて、放ってやった七郎というあの侍は、その後、主家の兵衛から、役に立たぬ不届き者と、家をも扶持ふちをも奪われて牢人となり、菰僧に落ちれていると聞いたが……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たれかれの善きを憶ひて笑みてゐる独りのひとやの冷えに目覚めて
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
亡ぼされ、過ぎ去り、失われたひとやの春………
青春:献じる詩(牢獄にて) (新字新仮名) / 槙村浩(著)
のがれもえせぬ「死」のひとや
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
されどわが量るところ違はずば、ディーテに課して第一のひとやに大いなる獲物えものをえし者の來れる時より少しく前の事なりき 三七—三九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
すると、突然ある日、そのころ筑後ちくご前司ぜんじ小舎人ことねりになっていた弟が、盗人の疑いをかけられて、左のひとやへ入れられたという知らせが来た。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なんじを訴うる者とともにみちに在るうちに、早く和解せよ。おそらくは、訴うる者なんじを審判人さばきびとにわたし、審判人は下役したやくにわたし、ついになんじはひとやに入れられん。
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
水代へるたびにいとしむフリージャの白きがひとやの花器にゆれゐつ
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
我はひとやに朽つるべき
青春:献じる詩(牢獄にて) (新字新仮名) / 槙村浩(著)
又曰ひけるは、わが子よ、これらの岩の中に三の小さきひとやあり、その次第をなすこと汝が去らんとする諸〻の獄の如し 一六—一八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
が、おれは莫迦莫迦ばかばかしかったから、ここには福原ふくはらひとやもない、平相国へいしょうこく入道浄海にゅうどうじょうかいもいない、難有ありがたい難有いとこう云うた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
字を知らず打たれし憶ひのなつかしさずれし辞書はひとやに愛し
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
斯く我は第一のひとやより第二の獄に下れり、是は彼よりをさむる地少なく苦患なやみははるかに大いにして突いて叫喚を擧げしむ 一—三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おれは、とうとう覚悟をきめて、沙金といっしょに、五六人の盗人を語り集めた。そうして、その夜のうちに、ひとやをさわがして、難なく弟を救い出した。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その友をカルロのひとやの中にうくる苦しみの中より救ひいださんとて、己が全身をかしこに震はしむるにいたれり 一三六—一三八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
我は悲しみの王土のうちなる諸〻のひとやをへてこゝに來れり、天の威力ちから我を動かしぬ、しかしてわれこれとともに行く 二二—二四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)