独乙ドイツ)” の例文
「えゝ、よけいもありませんがまあ日本語と英語と独乙ドイツ語のなら大抵ありますね。伊大利イタリーのは新らしいんですがまだ来ないんです。」
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
なに、マルクスが正しい独乙ドイツ語さえ書いていれば俺にだって分るさ、と、彼の顔色を見たのか、伯父はそんなことまで附け加えた。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかしそれだからといって日本も、支那も、英吉利イギリスも、独乙ドイツも、同じ現象を同じ順序に過去でかえしているとは参らんのであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夕方、私たちは下町のユウハイムという古びた独乙ドイツ菓子屋の、奥まった大きなストーブに体を温めながら、ほっと一息ついていた。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
池田林儀が独乙ドイツ留学から帰つて「優生運動」といふのをやり出した時、その雑誌に書いたのである。十五年もまへだ。
普通教育は全く独乙ドイツ式で、挙国兵の基としてまず高等及尋常の師範学校に兵式体操を行わしめ、順次に小学校は勿論、中学校等にも兵式体操を行わしめ
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
う十年近く働いて居る独乙ドイツ種の下女と、頭取の妻君の遠い親類だとか云ふ書生と、時には妻君御自身までが手伝つて、目のふ程にせわしく給仕をして居る。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
西洋では、日本に近いのはフランス、支那に近いのはユダヤ、印度に近いのは独乙ドイツであろうか。ただ独乙の智はむしろ哲学の面であって、宗教の面ではない。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
独乙ドイツことわざに曰く「屋上のはとは手中のすゞめかず」と。著者の屋上の禽とは此諺の屋上の鳩を意味するもの。果して然らば少しく無理の熟語と謂はざるからず。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
後閑はすなわち空閑である。開墾者がその特権を留保する土地の区劃を示すものでこの点から見れば堀之内は、独乙ドイツのホーフに比べられる名主の垣内とまず同じものである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これが真のフレンド friend で独乙ドイツのいわゆるフロインド Freund である。フロイ即ち愛があって此処ここに始めて友——真の意味に於ける——友が出来るのである。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
英語はもとより、仏蘭西フランスをどうの、独乙ドイツをこうの、伊太利イタリー語、……希臘ギリシャ拉甸ラテン……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
独乙ドイツから、あこがれの瑞士スイスへ入って、恰度ちょうど倫敦ロンドンから巴里パリを経て来た近藤茂吉氏と、インタアラーケンのベルネルホッフという宿で落ち合い、登山の相談をして、七月二十九日には、準備を整え
独乙ドイツでは犬も博士の肩書がありますと嬢様は手厳しく仰しやつた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「ええ、よけいもありませんがまあ日本語と英語と独乙ドイツ語のなら大抵たいていありますね。伊太利イタリーのは新らしいんですがまだ来ないんです。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
独乙ドイツの浪漫派だとか、英吉利イギリスの自然派だとか表題をつけて、その表題の下に、いくたりも人間の頭数を並べて論じてあります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大戦前に独乙ドイツで国際工藝品展覧会が行われ、日本からは吾々の手を通し、幾種かの固有のものを出品致しましたが、私たちはその中にこの山水土瓶を加えることを忘れませんでした。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
抽出しの中はなんだか私の読めない露西亜語の本ばかり詰まっていたが、なかに一冊独乙ドイツ語の薄っぺらな本の雑っているのを見つけた。それから小さな独露辞書らしいものもあった。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「見せてあげませう。僕実は望遠鏡を独乙ドイツのツァイスに注文してあるんです。来年の春までには来ますから来たらすぐ見せてあげませう。」
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
図書館で浪漫的ロマンチツクアイロニーと云ふ句を調べて見たら、独乙ドイツのシユレーゲルが唱へ出した言葉で、何でも天才と云ふものは、目的も努力もなく
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「見せてあげましょう。僕実は望遠鏡を独乙ドイツのツァイスに注文してあるんです。来年の春までには来ますから来たらすぐ見せてあげましょう。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼は最初から確実に地上をあるいてゐた。のみならず彼の眼界は狭い独乙ドイツによつて東西南北共に仕切られてゐた。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
独乙ドイツで浪漫主義のさかんに起った時、御承知の通り、有名なカロリーネと云うシュレーゲルの細君がありました。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最も想像に困難なのは、豚が自分の平らなせなかを、棒でどしゃっとやられたとき何と感ずるかということだ。さあ、日本語だろうか伊太利亜イタリア語だろうか独乙ドイツ語だろうか英語だろうか。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さうすれば大した困難と誤解なしに、現下独乙ドイツに於る彼の地位が、比較的明瞭に想像され得るからである。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
独乙ドイツのフェヒナーは十九世紀の中頃すでに地球その物に意識の存すべき所以ゆえんを説いた。石と土とあらがねに霊があると云うならば、有るとするをさまたげる自分ではない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本人の思はく如何いかんは別問題として、彼の唱道した超人主義の哲学が、此際独乙ドイツに取つて、れ程役に立つてゐるかも遠方に生れた自分には殆んど見当が付かない。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それを目撃した彼の友達は独乙ドイツ語を習い始めの子供であったので、「フラウ門にって待つ」といって彼をひやかした。しかし御縫さんは年歯としからいうと彼より一つ上であった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はちょうど独乙ドイツ聯合軍れんごうぐんと戦争をしているように、病気と戦争をしているのです。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども深い交際つきあいはなかった。卒業して独乙ドイツへ行って帰って来たら、急に職業がえをしてある大きな銀行へ入ったとか人のうわさに聞いた位より外に、彼の消息は健三に伝わっていなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
所へ池田菊苗君が独乙ドイツから来て、自分の下宿へ留った。池田君は理学者だけれども、話して見ると偉い哲学者であったには驚いた。大分議論をやって大分やられた事を今に記憶している。
処女作追懐談 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かつて墨汁一滴か何かの中に、独乙ドイツでは姉崎や、藤代が独乙語で演説をして大喝采だいかっさいを博しているのに漱石は倫敦ロンドン片田舎かたいなかの下宿にくすぶって、婆さんからいじめられていると云う様な事をかいた。
昨日きのうは鏡の手前もある事だから、おとなしく独乙ドイツ皇帝陛下の真似をして整列したのであるが、一晩寝れば訓練も何もあった者ではない、直ちに本来の面目に帰って思い思いのたちに戻るのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)