あかし)” の例文
新字:
に直行も気味好からぬ声とは思へり。小鍋立こなべだてせる火鉢ひばちかど猪口ちよくき、あかして来よとをんなに命じて、玄関に出でけるが、づ戸の内より
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おろしに吹きさらされて、荒草深い山裾の斜面に、万蔵法院まんざうはふゐんのみあかしの煽られて居たのに目馴れた人たちは、この幸福な転変に目を睜つて居るだらう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
御廚子みずしの前に、深く蝋燭ろうそくを点じ、捧げてのち、女はくれないふさに手を掛けた。あかしをうけると、その姿は濃くなった。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛宕あたご、清水をすぐ下に望む大廂おおびさし彼方かなたに、夕富士の暮れる頃になると、百間廊下のがんには見わたす限りのあかしが連なり、御所の上﨟じょうろうかとまごう風俗の美女たちが、琴を抱いて通り
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたへ過ぎ、見ればみあかしほのめきて
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
何処からか吹きこんだ朝山おろしに、御あかしが消えたのである。当麻語部たぎまかたりの姥も、薄闇に蹲つて居るのであらう。姫は再、この老女の事を忘れてゐる。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
例の如く湯にりて、あがればぢきぜん持出もちいで、あかしも漸く耀かがやきしに、かの客、いまだ帰り
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ふッとあかしを消すと同時に、再びお兼の手をしっかと取って
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あかしともるには未だ間ありと見るなるべし。直行は可難むづかしげにまゆを寄せ、くちびるを引結びて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あかしを差し向けて、いまだその血に驚くいとまあらざるに
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あかししろく、ちら/\とまどながれた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)