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滴々
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てきてき
ふりがな文庫
“
滴々
(
てきてき
)” の例文
喉
(
のど
)
がかわいているとみえて、蛾次郎はそこで
一息
(
ひといき
)
つくと、
岩層
(
がんそう
)
のあいだから
滴々
(
てきてき
)
と落ちている
清水
(
しみず
)
へ顔をさかさまにして、口をあいた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この物質的に何らの功能もない述作的労力の
裡
(
うち
)
には彼の生命がある。彼の
気魄
(
きはく
)
が
滴々
(
てきてき
)
の
墨汁
(
ぼくじゅう
)
と化して、一字一画に
満腔
(
まんこう
)
の精神が飛動している。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
千百の言葉は一団の飯にも及ばず、
娓々
(
びび
)
の
言
(
げん
)
は
滴々
(
てきてき
)
の
水
(
みづ
)
にも
如
(
し
)
かぬ場合である。けれども今の自分の此の言葉は言葉とのみではない。直ちに是自分の心である。
日本大地震
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
松吟庵
(
しょうぎんあん
)
は
閑
(
かん
)
にして
俳士
(
はいし
)
髭
(
ひげ
)
を
撚
(
ひね
)
るところ、五大堂は
寂
(
さ
)
びて
禅僧
(
ぜんそう
)
尻
(
しり
)
をすゆるによし。いわんやまたこの時金風
淅々
(
せきせき
)
として天に
亮々
(
りょうりょう
)
たる
琴声
(
きんせい
)
を聞き、細雨
霏々
(
ひひ
)
として
袂
(
たもと
)
に
滴々
(
てきてき
)
たる
翠露
(
すいろ
)
のかかるをや。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
涙はほおを伝うて
滴々
(
てきてき
)
として足元に落ちた。足にはわらじをはいている。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
▼ もっと見る
雪の
肌
(
はだえ
)
に
滴々
(
てきてき
)
たる水は
白蓮
(
びゃくれん
)
の露をおびたる
有
(
あり
)
さま。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
水
(
みず
)
滴々
(
てきてき
)
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
燦
(
さん
)
として、二人の具足や太刀金具が光を放つ。それにつけて満身の雪も
滴々
(
てきてき
)
としずくして落ちた。いや二人の涙はそれにまさるものがあった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何、大丈夫だ」と云いながら高柳君は
尖
(
とが
)
った肩を二三度ゆすぶった。松林を横切って、博物館の前に出る。大きな
銀杏
(
いちょう
)
に
墨汁
(
ぼくじゅう
)
を
点
(
てん
)
じたような
滴々
(
てきてき
)
の
烏
(
からす
)
が乱れている。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また閑素な茶室のどこかに、岩清水のような
滴々
(
てきてき
)
な音をさせているかと思うと、ここの家族がみな「
御研小屋
(
おとぎごや
)
」と敬称して
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
滴々
(
てきてき
)
と垣を
蔽
(
おお
)
う
連𧄍
(
れんぎょう
)
の
黄
(
き
)
な向うは
業平竹
(
なりひらだけ
)
の
一叢
(
ひとむら
)
に、
苔
(
こけ
)
の多い御影の
突
(
つ
)
く
這
(
ば
)
いを添えて、三坪に足らぬ小庭には、一面に
叡山苔
(
えいざんごけ
)
を
這
(
は
)
わしている。琴の
音
(
ね
)
はこの庭から出る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、それは一浴したためというよりも、彼の五体を駆けめぐっている血行と頭脳の活動から垂るる
滴々
(
てきてき
)
のものだといったほうがあたっていよう。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鮮
(
あざ
)
やかな
紅
(
べに
)
の
滴々
(
てきてき
)
が、いつの雨に流されてか、半分
溶
(
と
)
けた花の海は
霞
(
かすみ
)
のなかに
果
(
はて
)
しなく広がって、見上げる
半空
(
はんくう
)
には
崢嶸
(
そうこう
)
たる一
峰
(
ぽう
)
が
半腹
(
はんぷく
)
から
微
(
ほの
)
かに春の雲を吐いている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
朽木
(
くちき
)
の根から、
滴々
(
てきてき
)
と落ちている清水に
喉
(
のど
)
をうるおそうとして、ふと、
苔
(
こけ
)
や木の葉に埋もれている道しるべの石をみると
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜なので、人目もなかったが、昼だったら、駒の駈けた後に、
滴々
(
てきてき
)
と血のこぼれを往来の人は見たであろう。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ、
滴々
(
てきてき
)
と、からだを打つものは、岩壁の肌から乳のように絞られる
清水
(
しみず
)
である。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忍剣を斬り、龍太郎の首をうち、いままた伊那丸を
刑
(
けい
)
した半助は、さすがに斬りつかれがしたとみえて、
滴々
(
てきてき
)
と、
血流
(
ちなが
)
しから赤い
雫
(
しずく
)
のたるる
刃
(
やいば
)
をさげて、ぽうッとしばらく立っていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
滴
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
々
3画
“滴々”で始まる語句
滴々々