海草かいそう)” の例文
さっき目のまえには、海草かいそうがうちよせられて、山のようになっていましたが、いまは、そこには大きな門が、ひらかれているのです。
なぎさはどこも見渡す限り、打ち上げられた海草かいそうのほかはしらじらと日の光に煙っていた。そこにはただ雲の影の時々大走おおばしりに通るだけだった。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やまほうから、またおかえて、うみほうからえだや、海草かいそうや、のようなものをくわえてきて、からすはつくりました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
その地面には赤黒いいばらのような草が限りなく生えている。始めはたでの種類かと思って、橋本に聞いて見たら橋本はすぐかむりを横に振った。蓼じゃない海草かいそうだよと云う。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まず縄梯子なわばしごを右のふなばたにかけたので、幼年組は先をあらそうて梯子をおり、ひさしぶりで、陸地をふむうれしさに、貝を拾ったり、海草かいそうを集めたりして、のどかなうたとともに
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
海草かいそうの林も七色の魚群もうしろに走り去って、あたりは急にうすぐらくなった。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
イタクロ 紀州海草かいそう
そして、汽船きせんぎたあとには、しばらく白浪しらなみがあわだち、それもしずまると、海草かいそうがなよなよと、緑色みどりいろはたのごとくなごやかにゆれるのでありました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
見れば、長い砂浜すなはまがあって、そこには石や水たまりがあり、たくさんの海草かいそうが波にうちあげられています。
僕はしばらく月のうつった池の上を眺めていた。池は海草かいそうの流れているのを見ると、潮入しおいりになっているらしかった。そのうちに僕はすぐ目の前にさざ波のきらきら立っているのを見つけた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ある食道狭窄しょくどうきょうさくの患者は病院には這入はいっているようなものの迷いに迷い抜いて、灸点師きゅうてんしを連れて来て灸をえたり、海草かいそうって来てせんじて飲んだりして、ひたすら不治の癌症がんしょうなおそうとしていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
エーランド島は、なん年ものあいだ海の中によこたわっていたんだが、そのあいだには、海草かいそうだとか、すなだとか、かいだとか、いろんなものが波にはこばれてきて、島のまわりに集まったんだ。
はるかみなみあたたかなうみの、ひともいかないところでありました。そこの海中かいちゅういわかげに、ふわふわとかんでいる海草かいそうに、おじいさんをしてしまったのです。一にちふわふわとうみうえかんでいます。
ものぐさじじいの来世 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むすめは、あかで、しろいろうそくに、さかなや、かいや、または海草かいそうのようなものを、まれつきで、だれにもならったのではないが上手じょうずえがきました。おじいさんは、それをるとびっくりいたしました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)