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水中
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すゐちう
其處には
山椿の
花片が、
此のあたり
水中の
岩を
飛び
岩を
飛び、
胸毛の
黄色な
鶺鴒の
雌鳥が
含みこぼした
口紅のやうに
浮く。
又獲物が
鋭く
水を
切つて
進んで
來るのを
彼等の
敏捷な
目が
闇夜にも
必ず
逸することなく、
接近した一
刹那彼等は
水中に
躍つて
機敏に
網を
以て
獲物を
卷くのである。
負傷は
直る、
然し、
精巧な
銃を
毀したならば、それは
直らない。
況してあの
時中根が
銃を
離して
顧みなかつたならば、
銃は
水中に
無くなつたかも
知れない。
即ち
歩兵の
命を
失つたことになる。
と
我鳴らしつけが、お
妾は
慌てもせず、
珠の
簪を
抜くと、
舷から
水中へ
投込んで、
颯と
髪の
毛を
捌いたと
思へ。……
胴の
間へ
突伏して
動かぬだ。