気取きど)” の例文
旧字:氣取
と、また短銃をだして、手拭てぬぐいにクルクルとくるんだ。そいつを、ボロざやの刀と一しょにこしへさして、大小だいしょうしたように気取きどりながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、あるんだろう。あってもおつ気取きどって澄ましているんだろう。でなければ僕に隠して今でも何かやってるんだろう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こといたものに敬服けいふくしてゐたM、K名前なまえつてゐるだけで、わたしには、初対面しよたいめんであつたが、すこしも気取きどらない、ヒユモリストであるので
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
僕は説明することの出来ないような困惑にとらわれた。そして隣家に住むマスミに気取きどられぬよう、跫音を忍んで、その隣りの、わが家の雨戸の前に立ったのである。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼はあの二度目の手紙を受けてから、何かしら決心しているに相違ない——壁に耳——若し、大事を真実この女白浪に気取きどられているとしたら、生かしては置けないのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
校長の背広せびろには白いチョークがついていた。顔の長い、背の高い、どっちかといえばやせたほうの体格で、師範しはん校出の特色の一種の「気取きどり」がその態度にありありと見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
この代診だいしんちいさい、まるふとったおとこ頬髯ほおひげ綺麗きれいって、まるかおはいつもよくあらわれていて、その気取きどった様子ようすで、あたらしいゆっとりした衣服いふくけ、しろ襟飾えりかざりをしたところ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
中々なか/\とゞいたもので、土間どまひろく取つて、卓子テーブルに白いテーブルかけかゝつて、椅子いすりまして、烟草盆たばこぼんが出てり、花瓶くわびんに花を中々なか/\気取きどつたもので、菓子台くわしだいにはゆで玉子たまごなにか菓子がります
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
チュウリップ酒でけた瓶詰びんづめです。しかし一体ひばりはどこまでげたでしょう。どこまで逃げて行ったのかしら。自分でんな光のなみおこしておいてあとはどこかへ逃げるとは気取きどってやがる。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あいつは仲々なかなか気取きどってるな。」
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
本部の気取きどつた建物が
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)