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横溢
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おういつ
ふりがな文庫
“
横溢
(
おういつ
)” の例文
後藤二氏の言論には政敵を圧迫する争気と殺気とが
横溢
(
おういつ
)
しているだけで、国民の味方としては何らの表示をも認めることが出来ません。
選挙に対する婦人の希望
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そういう怖れをいだくのも、家康自体にその危さが
横溢
(
おういつ
)
しているためよりも、時代の人気があまり家康に有利でありすぎたせいだった。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
僅
(
わずか
)
に数筆を
塗抹
(
とまつ
)
した泥画の寸紙の中にも芸衛的詩趣が
横溢
(
おういつ
)
している。造詣の深さと創造の力とは誠に近世に
双
(
なら
)
びない妙手であった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
日本はこの戦争に必ず勝つ、このように国内に活気
横溢
(
おういつ
)
して負けるはずはない、とあの松島の旅館においても予言していたのだが、その勝利が
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
近世的の大詩人ヴェルハアレンの詩篇に、そが
郷国
(
きょうこく
)
フランドルの古画に現はれたる生活慾の
横溢
(
おういつ
)
を称美したる一章あり。
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
停車場前の宝登山亭という宿屋に休んで汁粉を命じた。これがまた野趣
横溢
(
おういつ
)
たるものがあって、三人を喜ばせた。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
彼
(
か
)
の松陰の如きは、その血管中に
敵愾心
(
てきがいしん
)
の
横溢
(
おういつ
)
したるに
係
(
かかわ
)
らず、なお鎖国の小規模に陥らざりしもの、固より象山啓発の力、
与
(
あずか
)
りて大ならずんばあらず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ここにも情熱の音詩人シューマンの、人間らしさが
横溢
(
おういつ
)
して、限りなく人を打つものを感じさせるからである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
巨船ゼムリヤ号発狂事件——という名称からして既に怪奇味が
横溢
(
おういつ
)
し只ならぬ事態が
窺
(
うかが
)
われる次第であるが
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
年々の外患もいつか忘れ、
横溢
(
おういつ
)
する朝野の平和気分は、自然、反動的な
華美享楽
(
かびきょうらく
)
となって現れだした。
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
精神異常者でなければトテモ書けないと思われるような気味の悪い妖気が全篇に
横溢
(
おういつ
)
しております。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
やはり日本人特有の季題感が至るところに
横溢
(
おういつ
)
していることが認められるであろうと思われる。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
感興が
横溢
(
おういつ
)
すれば、十三弦からはみ出してしまうほどの、
無碍
(
むげ
)
の芸術境に遊ぶ人だった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何分御牧氏の設計は西洋近代趣味の
横溢
(
おういつ
)
したものであるだけに、
贅沢
(
ぜいたく
)
で金のかかるものなので、事変の影響下にだんだん注文が少くなり、仕事が全く閑散になってしまったために
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
律動的で、しかも一
分
(
ぶ
)
のむだもない棒の使い方。疲れを知らぬ肉体が
歓
(
よろこ
)
び・たけり・汗ばみ・
跳
(
は
)
ねている・その圧倒的な力量感。いかなる困難をも
欣
(
よろこ
)
んで迎える
強靱
(
きょうじん
)
な精神力の
横溢
(
おういつ
)
。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
世界戦以後のモダアニズムの
横溢
(
おういつ
)
につれて圧倒的に流行しはじめた洋装やパーマネントに押されて、昼間の銀座では、
時代錯誤
(
アナクロニズム
)
の
可笑
(
おか
)
しさ身すぼらしさをさえ感じさせたこともあったが
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
歓楽的な空気の
横溢
(
おういつ
)
しているお
住居
(
すまい
)
であったから、そんな中に内気なおとなしい人が混じって物思いをしていても
軽佻
(
けいちょう
)
に騒ぐ仲間に引かれて、それも同じように朗らかなふうをしていたり
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
まず手に持っているのが槍だか竿だかわからないのに、その使いぶりときた日には格も法も一切
蹂躪
(
じゅうりん
)
し去って野性
横溢
(
おういつ
)
、奇妙幻出、なんとも名状することができないのがあまりに不思議でありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その実ばかりでなく、大きい葉にも、黄いろい花にも野趣
横溢
(
おういつ
)
、静かにそれを眺めていると、まったく都会の
塵
(
ちり
)
の浮世を忘れるの感がある。糸瓜を軽蔑する人々こそ却って俗人ではあるまいかと思う。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ずいぶん衒気が
横溢
(
おういつ
)
しており、見世物みたいな服装で社交界に乗りこむバルザック先生、屋根裏のボードレエル先生でも
大阪の反逆:――織田作之助の死――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
近世的の大詩人ヴェルハアレンの詩篇に、そが
郷国
(
きょうこく
)
フランドルの古画に現はれたる生活慾の
横溢
(
おういつ
)
を称美したる一章あり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
たった一枚両面のレコードだが、街へ行って
玩具
(
おもちゃ
)
の鳴物を買い集め、驚き
呆
(
あき
)
れる楽員に演奏させたという、ハイドンの茶目気分が
横溢
(
おういつ
)
して楽しいことである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
これを
彼
(
か
)
のマヂニーが一句一言、その偉大なる品性の印象、道念の清遠
皎潔
(
こうけつ
)
なる高調、人情の円満なる進歩を主宰する上帝の摂理を仰望する活信を以て
横溢
(
おういつ
)
するに比す
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
上品で行儀よく、知性に富んだ子は、南蛮寺の附属
耶蘇
(
やそ
)
学校でならったミサの歌や讃美歌も知っていた。第一期生のような乱暴者や野性の
横溢
(
おういつ
)
はいまの小姓部屋には見られなかった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それにしても
渺
(
びょう
)
たる一少女に過ぎない彼女が、あらゆる通信、交通機関の
横溢
(
おういつ
)
している今の世の中に、しかも眼と鼻の間とも言うべき東京と横浜に在る貴下と私の一家を、かくも長い間
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
旺盛な生活力を一杯に舞台の上に
横溢
(
おういつ
)
させていることとであろうと思われた。
マーカス・ショーとレビュー式教育
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
仙台の新聞には「沈勇なる東北兵」などという見出しの特別読物が次々と連載せられ、森徳座という芝居小屋でも遼陽陥落万々歳というにわか仕立ての狂言を上場したりして、全市すこぶる活気
横溢
(
おういつ
)
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
フランス音楽の六人組の一人、オネッガーと共に重要で、新味
横溢
(
おういつ
)
した曲がかなりレコードされている。「弦楽四重奏曲第七番=変ロ短調」は新鮮で感覚的で面白い。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
と
一際
(
ひときわ
)
大きな声で云ううちに、正木博士の右手の
拳骨
(
げんこつ
)
が高く揚がると、私の頭の中の迷いを一気にたたき
除
(
の
)
けるように空間で躍った。……活溌な……万事を打ち消すような元気を
横溢
(
おういつ
)
さして……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「秋庭」という題で相当な
大幅
(
たいふく
)
である。ほとんど一面に朱と黄の色彩が
横溢
(
おういつ
)
して見るもまぶしいくらいなので、一見しただけではすぐにこれが自分の昔なじみの庭だということがのみ込めなかった。
庭の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
まったく野戦の状態で、野放しにされた荒々しい野性が
横溢
(
おういつ
)
しているのである。然し彼等の魂にはやはり驚くべき節度があって、つまり彼等はみんな高貴な女先生の面影を胸にだきしめているのだ。
風と光と二十の私と
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
しかし茶目気分
横溢
(
おういつ
)
していてむつかしい学科はなんでもきらいだという悪太郎どもにとっては、先生の勤勉と、正確というよりも先生の教える学問のむつかしさが少なからず煙たくもあったらしい。
田丸先生の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“横溢”の意味
《名詞》
横 溢(おういつ 別表記:汪溢)
水がいっぱいになるほどみなぎること。
気力などがあふれるほどに盛んなこと。
(出典:Wiktionary)
横
常用漢字
小3
部首:⽊
15画
溢
漢検準1級
部首:⽔
13画
“横”で始まる語句
横
横町
横柄
横面
横着
横浜
横合
横川
横臥
横腹