桂川かつらがわ)” の例文
よど川尻かわじりで舟に乗った生絹は、右に生駒いこまの山、男山おとこやまを見、左に天王山てんのうざんをのぞんだ。男山のふもと、橋本のあたりで舟は桂川かつらがわに入って行った。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
梶原かじわら申しけるは、一歳ひととせ百日ひゃくにちひでりそうらひけるに、賀茂川かもがわ桂川かつらがわ水瀬みなせ切れて流れず、筒井つついの水も絶えて、国土こくどの悩みにて候ひけるに、——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この人は漁夫に変装して日々桂川かつらがわりをれ、幕府方や会津桑名の動静を探っては天龍寺にある長州軍の屯営とんえいに通知する役を勤めた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
桂川かつらがわの岸伝いに行くといくらでも咲いていると云うコスモスも時々病室を照らした。コスモスはすべてのうちで最も単簡たんかんでかつ長く持った。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
爪弾つまびきではありますが、手にとるように聞えてくるのは、ここもと、園八節の道行みちゆき桂川かつらがわ恋のしがらみか何かであります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょっとするとこの洲は大江たいこうの中に孤立している島ではなくてここで桂川かつらがわが淀の本流に合している剣先なのではないか。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大山は今の大山まち、日向は今の高部屋たかべや村で、どちらも大磯と同じ中郡なかごおりである。津久井県は今の津久井郡で相模川がこれを貫流している。桂川かつらがわはこの川の上流である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
高さは僅か三十三ひろとちっとばかり、下はたんとも深くねえが、やっぱり三十と三尋、甲州名代なだいの猿橋の真中にブラ下って桂川かつらがわ見物をさせてもらうなんぞは野郎も冥利みょうりだ。
それから五、六日経って、桂川かつらがわに身を投げた二人の女房がいた。一人は副将の乳母で、首を懐に、今一人はお側付きの女房で、幼いなきがらを大切に抱いて、それぞれ沈んでいった。
嵐山其ものと桂川かつらがわとは旧に仍って美しいものであったが、川の此岸こなたには風流に屋根ははぎいてあったが自働電話所が出来たり、電車が通い、汽車が通い、要するに殺風景さっぷうけいなものになり果てた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
所がさいわいに江戸に桂川かつらがわと云う幕府の蘭家らんかの侍医がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
せんと云う下女が来て、昨夕ゆうべ桂川かつらがわの水が増したので門の前の小家こいえではおおかたの荷をこしらえて、預けに来たという話をした。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
桂川かつらがわの流れを越えると、京はもう間近にそこらの山上から指さされる。幸いにも、わしはそこで御主人に追いついた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
場所は——前記のは、桂川かつらがわのぼる、大師だいしの奥の院へ行く本道と、渓流を隔てた、川堤の岐路えだみちだった。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
桂川かつらがわ加茂川かもがわ、二水の景を一ていにとり入れて、鳥の音もかすかに、千種ちぐさの姿もつつましく、あるがままな自然を楽しむのみならば、四季、いつということもない。
田畑を隔てた、桂川かつらがわの瀬の音も、小鼓こつづみに聞えて、一方、なだらかな山懐やまふところに、桜の咲いた里景色さとげしき
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
列は、桂川かつらがわを渡り、松尾の間道をこえ、その夕方、もとっぷり暮れたころ、亀山の本城へ着いた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人形使 たとい桂川かつらがわさかさに流れましても、これに嘘はござりませぬ。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わけても、勝龍寺しょうりゅうじの城などは、事変の中心地から、馬なら一鞭ひとむちで来られる山城国やましろのくに乙訓郡おとくにごおりにあるので、桂川かつらがわの水が、白々と朝を描き出した頃には、もう悍馬かんばを城門に捨てた早打ちの者が
鎌倉殿ことごとしや、何処いずこにて舞いて日本一とは申しけるぞ。梶原申しけるは、一歳ひととせ百日のひでりの候いけるに、賀茂川かもがわ桂川かつらがわ水瀬みなせ切れて流れず、筒井の水も絶えて、国土の悩みにて候いけるに、——
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
光秀が、長駆、桂川かつらがわを渡って、にわかに御坊塚まで出る決断をとったのも。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真に思いもかけなかった桂川かつらがわのながれを四更しこうの空の下に見ていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左に降りれば、沓掛くつかけ桂川かつらがわをこえて、道はそのまま京へ入る。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桂川かつらがわ
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)