かしは)” の例文
かしはの木大王も白いひげをひねつて、しばらくうむうむと云ひながら、じつとお月さまをながめてから、しづかに歌ひだしました。
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かしかしは冬青もち木犀もくせいなどの老木の立ち込んだ中庭は狹いながらに非常に靜かであつた。ことごとしく手の入れてないまゝに苔が自然に深々とついてゐた。
鳳来寺紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
遠方をちかたは雨雲に閉されて能くも見え分かず、最近まぢかに立つて居るかしはの高さ三丈ばかりなるが、其太い葉を雨に打たれ風に揺られて、けうときを立てゝ居る。道を通る者は一人もない。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
前途ゆくての路もおぼつかなきまで黒みわたれる森に入るに、もみかしは大樹おほきは枝を交はし葉を重ねて、杖持てる我が手首たなくびをも青むるばかり茂り合ひ、梢に懸れる松蘿さるをがせ鬖〻さん/\として静かに垂れ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
『天麩羅に致しませうか? それとも月見なり五目なり、かしはも直ぐ出来ますが。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まつかしはは奥ふかくしげりあひて、二一青雲あをぐも軽靡たなびく日すら小雨こさめそぼふるがごとし。二二ちごだけといふけはしきみねうしろそばだちて、千じん谷底たにそこより雲霧くもきりおひのぼれば、咫尺まのあたりをも鬱俋おぼつかなきここちせらる。
ここに建内の宿禰の大臣、大命おほみことを請ひしかば、天皇すなはち髮長かみなが比賣をその御子に賜ひき。賜ふ状は、天皇のとよあかり聞こしめしける日に、髮長比賣に大御酒のかしはを取らしめて、その太子に賜ひき。
かくも歌ひぬ、賤がは、かしはに河に。
リシダス (旧字旧仮名) / ジョン・ミルトン(著)
あふちかしはの薄ら花ほのにちる
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
枝ぶり怪しきかしは
わなゝき (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
「おい君、行かう。林へ行かう。おれはかしはの木大王のお客さまになつて来てゐるんだ。おもしろいものを見せてやるぞ。」
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かしは木立をたもとほり
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かしはの木はみんな度をうしなつて、片脚をあげたり両手をそつちへのばしたり、眼をつりあげたりしたまゝ化石したやうにつつ立つてしまひました。
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大きなかしはの木は枝もうづまるくらゐ立派な透きとほった氷柱つららを下げて重さうに身体からだを曲げてりました。
雪渡り (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
雲の下のかしはの木立に時々冷たい雨のそそぐのが手に取るやうだ。それでもやはり夢らしい。
柳沢 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
みんなは、もつともだと思つて、それから西の方の笊森ざるもりに行きました。そしてだん/\森の奥へ入つて行きますと、一本の古いかしはの木の下に、木の枝であんだ大きな笊が伏せてありました。
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
私どもは思はず歓呼の声をあげました。楢やかしはの葉もきらきら光ったのです。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
それからかしはや松も生え出し、しまひに、いまのつの森ができました。
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ベゴ石も、だまって、かしはの葉のひらめきをながめました。
気のいい火山弾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ところがその日は朝も東がまっ赤でどうも雨になりさうでしたが私たちがかしはの林に入ったころはずゐぶん雲がひくくてそれにぎらぎら光って柏の葉も暗く見え風もカサカサ云って大へん気味が悪くなりました。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そして、かしはの木の下にとまりました。
気のいい火山弾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
私どもはかしはの林の中に入りました。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かしはの枯れ葉がざらざら鳴ってゐる。
柳沢 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
(それは大へんくらく沈んで見えました。空がすっかり白い雲でふさがり太陽も大きな銀の盤のやうにくもって光ってゐたのです)がなだらかに起伏しそのところどころに茶いろのくりかしはの木が三本四本づつちらばってゐるだけじつにしぃんとして何ともいへないさびしいのでした。
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)