本名ほんみょう)” の例文
三人の友だちとは、俳人の露柴ろさい、洋画家の風中ふうちゅう蒔画師まきえし如丹じょたん、——三人とも本名ほんみょうあかさないが、その道では知られたうできである。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこで一同は、作戦をこらすために、かたすみへって凝議ぎょうぎをしたうえ、おのおの国籍こくせき本名ほんみょうをあからさまに記入きにゅうしてやった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのことから、いつしかだれいうとなく、「酒屋さかやのワンこう」と、ぶようになりました。そして、このあわれな少年しょうねん本名ほんみょうすらるものがありません。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
アナトール・フランスは本名ほんみょうをアナトール・チボーといい、フランスでもだいりゅうの文学者であります。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
二人は登場人物の本名ほんみょうをみんなそらんじている。三四郎は耳を傾けて二人の談話を聞いていた。二人ともりっぱな服装なりをしている。おおかた有名な人だろうと思った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本名ほんみょう京四郎というのは、カフェ・ネオンから一丁ほど先にある電気商の若主人で、ネオンの新築当時、電燈や電熱器の配線工事をやった関係があって、それからこっち
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
フョードル・クジミッチ・チェーチェニコフ——これがソログーブの本名ほんみょうである。フョードルは、クジミッチは父称ふしょうといって、父親ちちおや特定とくてい語尾ごびをつけて、自分じぶん併用へいようするものである。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
また利休居士りきゅうこじ珍重ちんちょうしていた「赤がしら」と称える水さしも、それを贈った連歌師れんがし本名ほんみょうは、甚内じんないとか云ったと聞いています。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かれ本名ほんみょうは、万三まんぞうとか、万蔵まんぞうとかいったのであるが、むら人々ひとびとには、まんで、とおっていたのであります。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
本来ならば「丸木花作まるきはなさくこと本名ほんみょう張学霖ちょうがくりんは……」といった風に書くのが本当なのであるが、それを一々書くのが、わずらわしい程、××人が出てくることであるから、一つ思切おもいきって
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大講会だいこうえおきてとして、そうはまいりませぬ。ご本名ほんみょうをおしたためなきうちは、これを諸侯しょこうひかじょ伝令でんれいすることもならず、ご奉行ぶぎょうとしても、役儀やくぎがら試合をめいじるわけにもゆきませぬ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しまいには、本名ほんみょうをいうよりか、仲間なかま間柄あいだがらだけに、あだぶほうが、したしみのあった場合ばあいもあるが、そばをとおったどらねこに、いしげるのがおそかったからといって、こころから軽蔑けいべつした意味いみ
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
本名ほんみょう五十嵐庄吉いがらししょうきちといい、罪状ざいじょう掏摸すりだとのことだった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)