有之これある)” の例文
其方儀主人しゆじんつま何程なにほど申付候共又七も主人のつき致方いたしかた有之これあるべき處主人又七にきずつけあまつさへ不義ふぎの申かけを致さんとせし段不屆至極ふとゞきしごくに付死罪しざいつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お隣屋敷浮田中納言様へお移り遊ばされ候はば、第一に世間の名聞みやうもんもよろしく、第二にわたくしどもの命も無事にて、この上の妙案は有之これあるまじく候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何か徴発いたし候とて土民に対し惨刻千万の仕打ち有之これありすでにその処分も有之これあるべきところ⦅中略⦆とにかく戦死は彼がためにもっけの幸いに有之べく候。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
唐通詞とうつうじ陳東海と申す者にて候、七月十五日手前家内お種との古き因縁事に就き、是非共談合、らちを明け度き事有之これあるにつき庭窪にわくぼの蘇州庵迄出向くようとの書状を受け
外国の語も用ゐよ、外国に行はるる文学思想も取れよと申す事につきて、日本文学を破壊する者と思惟しいする人も有之これあるげに候へども、それは既に根本において誤りをり候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
泰勝院殿たいしょういんでん御代おんだいに、蒲生がもう殿申されそろは、細川家には結構なる御道具あまた有之これあるよしなれば拝見に罷出まかりいずべしとの事なり、さて約束せられし当日に相成り、蒲生殿参られそろ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
学士となれば満更下役も勤まるまじく、相応の口有之これあるまで気長くお待ちのようにお勧め申上候。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こういうお触れ書きが出たんだとよ、『布衣ほい以下は、格別の訳合有之これある節は、根津、音羽等へも相越し、平日は蹴転けころ(最下等の女郎)し、または百蔵ももぞう(同様)相用いらるべく候』
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小生は少年の頃隣家に住ひ居りし故く人品を存じ居候が、翁は実に迂人うじんにて世間利口に立廻る学者の様でなく誠に貴き所有之これある人なりき。其内そのうち閑を得たらんには一筆し置度存おきたくぞんじ候。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小生は如何にしても今日こんにち以後生きながらへ居ること難く候。何故と申すに小生生きながらへ居る限りは、世間の人あざけり笑ひ申すべく、誰一人事実の真相を認めくるる者は有之これあるまじく候。
今もの熱海に人は参り候へども、そのやうなるたのしみを持ち候ものは一人も有之これあるまじく、其代そのかはりには又、私如わたくしごと可憐あはれの跡を留め候て、其の一夜いちやを今だに歎き居り候ものも決して御座あるまじく候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
感じて思はず落涙らくるゐ仕り如何にも彦兵衞には有之これあるまじ外に人殺ありと申たるに相違さうゐ御座なく候と申ければ大岡殿聞給ひさらば馬喰町米屋市郎左衞門伯母をばころし金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
千々岩ちぢわはおりおりまいり候由。小生らは誠に親類少なく、千々岩はその少なき親類の一にんなれば、母上も自然頼みにおぼす事に候。同人をよくたいするも母上に孝行の一に有之これあるべく候。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
大岡殿より差紙さしがみを以て勘兵衞たな權三助十の兩人尋ねの儀有之これあるつき召連めしつれ罷出まかりいづべきむねたつされければ家主勘兵衞は兩人をよび貴樣達は何ぞわるい客人をのせて物でも取たかたゞし客人の錢金ぜにかね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)