書置かきおき)” の例文
買取かひとりるに同じく漏居もれゐければ十兵衞不審いぶかりながら立歸りしが其夜に至り子息せがれ庄左衞門逐電ちくでんせし事を始て聞知り切齒はがみを爲て怒り歎きしが夜中に書置かきおき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その事に就きまして、主人に書置かきおきも致しましたやうな次第で、既に覚悟をきはめましたきはまで、心懸こころがかりと申すのは、唯そればかりなので御座いました。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「いや、よそう。兄さんは、危険だから早くふもとへひきあげろと書置かきおきしてある。さあ早く穴を出ようや」
雪魔 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
こんな顔になり其の顔で私の胸倉を取って悋気りんきをしますからられませんので、私が豊志賀のうちを駈出した跡で師匠が狂いじにに死にましたので、死ぬ時の書置かきおき
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お蝶は一通の書置かきおきを残していたので、それが自殺であることは疑うべくもなかったが、その書置は母にあてた簡単なもので、自分は子細あって死ぬから不孝はゆるしてくれ
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは夫人が夫博士に宛てた一通の書置かきおきであって中の文句は、永年の肺病で、自分も苦しみ、周囲にも迷惑を掛けていることが、最早や耐えられなくなったから、茲に覚悟の自殺をとげる。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それが頼みにしにくくなってのち、書置かきおきという風習が次第に行われた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
見る行燈あんどうだいの上に書置かきおきの事と記したる一ぷうありて然も之れ娘お光の手跡しゆせきなれば一目見るより大きに驚き直に飛起とびおき封じ目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其の書置かきおきに、私は老年の病気だから明日あすが日も知れん、し私がのちは家督相続は惣二郎、又弟惣吉は相当の処へ惣二郎の眼識めがねを以て養子に遣って呉れ、形見分かたみわけは是々
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたのこり六十兩はおのれものとし是迄に掠取かすめとりし金と合せ見るに今は七百兩餘に成ければ最早もはや長居ながゐは成難しと或日役所やくしよにてわざいさゝかの不調法ぶてうはふを仕出し主人へ申譯立難たちがたしとて書置かきおき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふるえながら新吉は伯父と同道で七軒町へ帰りまして、れからず早桶をあつら湯灌ゆかんをする事になって、蒲団を上げ様とすると、蒲団の間にはさんであったのは豊志賀の書置かきおき
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの御新造様も大旦那様もお逝去かくれになりました、それに御養子はいまだにお独身ひとりで御新造も持たず、貴方がおいで遊ばしてからあとで、書置かきおきが御新造様の手箱の引出ひきだしから出ましたので
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
左様な事を申さず早くけ、もし此の事が人の耳にりなば飯島の家に係わる大事、くわしい事は書置かきおきに有るから早くかぬか、これ孝助、一旦主従しゅうじゅうの因縁を結びし事なれば、あだは仇恩は恩