明白地あからさま)” の例文
けれども、彼女かれも若い娘である。流石さすがに胸一杯の嫉妬と怨恨うらみとを明白地あからさまには打出うちだし兼ねて、ず遠廻しに市郎を責めているのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
宗助そうすけもとよりさうだとこたへなければならない或物あるものあたまなかつてゐた。けれども御米およねはゞかつて、それほど明白地あからさま自白じはくあへてしなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぢいくんねえか」とあががまちむねたせて、ばた/\と下駄げた土間どまたゝきながら卯平うへいぜにふやうにつた。それでもかれぜにとは明白地あからさまにはいはない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
尤も明白地あからさまに指井とは云はぬ、『友人です、お掛りになれば分明わかります。』とだけで名前を云はない。
媒介者 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
岩村いわむらさんのお話しの『学士会院ラシステキューの鐘』と好一対こういっついとも云うべきで、少しゆえあって明白地あからさまに名前を挙げるのははばかりあるけれど、私のく懇意な人のそのまたあねさんのそのまた婿さんの実話である。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
宗助はもとよりそうだと答えなければならない或物を頭の中にっていた。けれども御米をはばかって、それほど明白地あからさまな自白をあえてし得なかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分じぶん丈夫ぢやうぶでせえありやとつくにやつちまつたんだが」と小聲こごゑでいつた。おしなはどうも勘次かんじすのがいやであつた。しかなんだかさう明白地あからさまにもいはれないのでういつたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞたあおもへねえよ、勘次かんじさんもあゝいにねえでもよかんべとおもふのになあ」嘆聲たんせいはつしては各自かくじこゝろ伏在ふくざいしてあるものくちには明白地あからさまふことをはゞかやう見合みあはせてたがひわらうてはわづか
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)