持上もちあが)” の例文
巴里パリイ唯一の芸術新聞コメデイアの記者で常に直截鋭利な議論を書く有名な若手の劇評家エミイル・マス君との間に決闘沙汰ざた持上もちあがつて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
引見んと思ひこれ不調法仕ぶてうはふつかまつりましたと云ながら持て座敷ざしきへ上んとするに少しも持上もちあがらずウン/\と云て力瘤ちからこぶ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何かあったのだ、川本が無電をかけて寄来よこした時と同じように、自分たちが流血船へ行っている後で、何か怪事が持上もちあがったのだ。怪事……そうだ、海坊主の——。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さうしてこの現象げんしよう原因げんいんは、水田すいでんどろそう敷地しきちとも水桶内みづをけないけるみづ動搖どうようおな性質せいしつ震動しんどうおこし、校舍こうしや敷地しきちあたところ蒲鉾かまぼこなりに持上もちあがつて地割ぢわれをしよう
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
いずこの大名だいみょう旗本はたもと屋敷やしきに、如何いかなるさわぎが持上もちあがっていようとも、それらのことは、まったくべつ世界せかい出来事できごとのように、菊之丞きくのじょううちは、しずかにしめやかであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この騒ぎが持上もちあがってる最中でもYは平気な顔をして私の家へ来て仕事の手伝いをしていた。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
国の方で持上もちあがる節子の縁談にいては、岸本は全くそれを知らないでも無かった。東京の義雄兄からは、まだそんな話のきまらない前に、一度巴里へ知らせてよこしたことも有った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この空気の中で、大伝馬町の佐久間家には大変な騒ぎが持上もちあがりました。
拳鬪けんとう翌日よくじつまたひと騷動さうどう持上もちあがつた。
「殺人鬼権六が潜入したとなると、こいつは二三日うちに何か事件が持上もちあがりますぜ、ことにもう宮橋氏へは脅迫状をやったと云うんですから、伯父さん処なんぞも危いですよ」
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「いや、それァ冗談じょうだんだが、いったいどんなことが持上もちあがったといいなさるんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その大久保石見守は、武州八王子で、三万石を食んで亡くなったが、死んだ後で大変なさわぎ持上もちあがった。——それは、遺書に七万両の大金を、七人のめかけに形見としてわけてやると書いてあったからだ。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)