扶桑ふそう)” の例文
いわゆる扶桑ふそう伝説はすなわちこれで、多分は太陽の海を離るる光景の美しさとうとさから、導かれたもののごとく私たちは推測している。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これぞその時代扶桑ふそう第一、天文暦数の大儒者として、吉宗将軍のちょうを受け、幕府天文方の総帥となった、求林斎西川正休きゅうりんさいにしかわまさやすである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
明日は、扶桑ふそう第一といわれる松島も見られるし、あこがれの狩野永徳にも見参ができるし、それに東道の主人が稀代の学者であり、絶世の美——
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
裾野の草が、人の軒下にはみ出るさびしい町外れとなって、板びさしの突き出た、まん幕の張りめぐらされた木造小舎ごやに、扶桑ふそう本社と標札がある。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
旗艦陸奥むつ以下長門ながと日向ひゅうが伊勢いせ山城やましろ扶桑ふそうが、千七百噸級の駆逐艦八隻と航空母艦加賀かが赤城あかぎとを前隊として堂々たる陣を進めて行くのであった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
松島を旗艦として千代田ちよだ厳島いつくしま橋立はしだて比叡ひえい扶桑ふそうの本隊これにぎ、砲艦赤城あかぎ及びいくさ見物と称する軍令部長を載せし西京丸さいきょうまるまたその後ろにしたがいつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
巨勢三杖大夫の伝はもとよりつまびらかにしえないのであるが、「法王帝説」註記に、扶桑ふそう略記の欽明きんめい天皇十三年条に
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
中で記してよいと思うものの一つに「端折傘つまおりがさ」があります。丹羽にわ扶桑ふそう村で作られます。産額は大きくないとしても、傘の類では日本一とたたえてよいでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
御嶽おんたけ教、扶桑ふそう教といろいろ聞いちゃおるが、お富士教ってえのはあっしも初耳なんで、今に忘れず覚えていたんですよ。本所のお蔵前といや、ここよりほかにねえんだ。
甲州武士こうしゅうぶしなどというせまい気持をすてて、まことの神州武士しんしゅうぶしとなるのだからいいじゃないか。われらの愛国あいこく甲斐かいではなくなった。日本にほんだ。かがやきのある神州しんしゅう扶桑ふそうの国だ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも私よりはるかに優秀らしい生徒が乗り合わせていたので、にわかに興がめて、洞庭どうてい西湖を恥じざる扶桑ふそう第一の好風も、何が何やら、ただ海と島と松と、それだけのものの如く思われて
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
風雨賦国字弁ぶこくじべん 巫学談弊ふがくだんぺい 袋草紙ふくろぞうし 不思議弁妄 扶桑ふそう見聞私記 扶桑略記 物学秘伝 仏国暦象編 仏祖統紀 物理訓蒙 物理小識 物類相感志 筆のすさび 文海披沙ぶんかいひしょう 文会筆録 文献通考
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
同地の扶桑ふそう館という宿屋に着いて十五日に日本領事館へたずねて行きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
戦艦『長門ながと』『陸奥むつ』『日向ひゅうが』『伊勢いせ』『山城やましろ』『扶桑ふそう』『榛名はるな』『金剛こんごう』『霧島きりしま』。『比叡ひえい』も水雷戦隊にかこまれているぞ。『山城』『扶桑』は大改造したので、すっかり形が変っている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
「富士は扶桑ふそう第一の霊山。しかし険しさも日本一だよ。よく登山出来ましたな。神のお誘導みちびきがあったからであろう」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
松島には狩野永徳が待っている——扶桑ふそう第一とうたわれた、その松島の風景的地位というものも見定めておきたいし、黄金花さくという陸奥の風物は一として
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは上人が日本廻国の期間を語るのであって、北は松前庄熊石に上り、中央は本州の凡てを通じ、南は四国、九州にわたるのです。その足跡は扶桑ふそう全土に及んでいます。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
これは『扶桑ふそう怪談実記』の誌すところであって、その姿ありともなしとも定まらずなどと至って漠然たる話ながら、山働きの者おりおり油断をすると木の子に弁当を盗まれることがあるので
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
厭な役廻りだがしかたがない。扶桑ふそう第一の智者と称し、安房の国の旋陀羅せんだらの子、聖日蓮セントにちれんは迫害を覚悟で、世の荒波へ飛び出して、済民さいみんの法を説いたではないか。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今日はこうして扶桑ふそう第一といわれる風景のところに、絶世の美人で、そうして一代の詩人に迎えられて、水入らずにお月見——美酒あり、佳肴かこうあり、毛氈もうせんあり、文台がある。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おそば去らずの寵臣ちょうしんで、火術にかけては扶桑ふそう第一、丸目一貫目の筒をかかえ、品川の海、五町の沖合い、廃船を轟然ごうぜんと打ち沈めたという。人品骨柄も打ちのぼり、年齢四十一歳である。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
錦旗ひるがえらば、よろしく大義親を滅し、京師に馳せつけ、禁裏を守護し、誓って誤りあるべからず、扶桑ふそうは神国、皇統は連綿、万民拝すべきは一かたおわす、みかどを置いてあるべからざるなり
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)