打寛うちくつろ)” の例文
帰幽以来きゆういらいなんねんかになりますが、わたくしんな打寛うちくつろいだ、なごやかな気持きもちあじわったのはじつにこのとき最初さいしょでございました。
胸のせまること急に、身内の血はことごとくその心頭しんとうに注ぎて余さずらるるかと覚ゆるばかりなるに、かかる折は打寛うちくつろぎて意任こころまかせの我が家に独り居たらんぞき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
程よいところで、さおをとどめて、それから二人は打寛うちくつろいで、充分にこの清夜を楽しむことになりました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私たちは門を閉めて今日は打寛うちくつろいで、置炬燵おきごたつに差向かった。そうしてこういう話をした。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
この日の食事の際には、プロス嬢は、彼女のお嬢さまの楽しい顔と彼女を喜ばそうとする楽しい努力とに応じて、よほど打寛うちくつろいでいた。だから、その食事もまた非常に楽しかった。
食事後しよくじご気分きぶんまえよりも一そう打寛うちくつろいだものであつたが、彼等かれら或者あるものなお未練みれんがましく私達わたしたちそばつてて、揉手もみてをしながら「キヤンニユスピイク、イングリシユ?」を繰返くりかえした。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
座敷へ通し御湯おゆわいをりますと云ゆゑすぐさま後藤は彼男ととも風呂ふろいりながら酒肴をあつらへおきやがて風呂も仕舞て出來りしに女子どもは酒肴を持出もちいでければ兩人は打寛うちくつろぎて酒宴しゆえんに時刻をうつしけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ただいま打寛うちくつろいで物語りを致す時間を持ち合わさぬ故に——それではこう致そう、貴殿の、その発心を、拙者はここで冷ますことを致したくない、よって、明晩と言わず、今晩
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
度々たび/\たのむなりと語るに清兵衞は傍邊かたはらよりすゝみ此長兵衞儀は私しがじつおとゝに候と申せしかばナニ長兵衞殿は貴樣の弟なりとや然樣さやうえんと云者は不思議なる者なり然すれば三人ながら親分子分兄弟の中別して遠慮ゑんりよはいらぬまづ打寛うちくつろぎてはなすべしと是より後藤は稽古けいこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)