応挙おうきょ)” の例文
幽霊の絵もこの類を漏れず、如何にも幽霊らしい、本当の幽霊とはどんな感じだろうという幽霊のかかれたのは応挙おうきょ以来だという事だ。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
たちまち、一羽立ち二羽立ち、ざあっと羽音も清々すがすがしく、冬晴れの真ッ青な空へ雪白をちらして、応挙おうきょ千羽鶴せんばづるのように群れ立つのへ
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しかしもしわが国の動物画家たる応挙おうきょにこの文字を示したならば、彼はおおいに喜んでこれ真の動物描写であるというであろう。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ただし、この方は掛物の前に立って、はあ仇英きゅうえいだね、はあ応挙おうきょだねと云うだけであった。面白い顔もしないから、面白い様にも見えなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
応挙おうきょや、北斎ほくさいや、ロダンや、セザンヌやの如く、純粋に観照的な態度によって、確実に事物の真相をつかもうとするところの、美術家の中の美術主義者が居る。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
水を描いて応挙おうきょの右に出づるものはないが、まだ大洋の水を写したのを見ない、房総の鼻をめぐって見ろと人から勧められたままに、出て来たのだということです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかるにまた大多数の人〻はそれでは律義りちぎ過ぎて面白くないから、コケが東西南北の水転みずてんにあたるように、雪舟せっしゅうくさいものにも眼をれば応挙おうきょくさいものにも手を出す
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
伊藤は牙籌がちゅう一方の人物で、眼に一丁字なく、かつて応挙おうきょ王昭君おうしょうくんの幅を見て、「椿岳、これは八百屋やおやお七か」といたという奇抜な逸事を残したほどの無風流漢であった。
松山を御出立の前夜湊町の向井へおともして買っていただいた呉春ごしゅん応挙おうきょ常信つねのぶの画譜は今でも持っておりますが、あのお離れではじめて知った雑誌の名が『帝国文学』で
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
床の間には、うつしで見て知っている、応挙おうきょの美女の幽霊が、おなじく写して掛っていた。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
無理かも知れぬが、試みに画家に例えるならば、栖鳳せいほう大観たいかんのうまさではない。靫彦ゆきひこ古径こけいでもない。芳崖ほうがい雅邦がほうでもない。華山かざん竹田ちくでん木米もくべいでもない。呉春ごしゅんあるいは応挙おうきょか。ノー。
河豚のこと (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
発起人は、絵師の応挙おうきょの内弟子、その正月をとって、十七歳になる仁太郎だった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大雅たいが応挙おうきょ月渓げっけいなどといふ画人が、急に世にときめき出したのも、しゃくに触つた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
京師けいし応挙おうきょという画人あり。生まれは丹波たんば笹山ささやまの者なり。京にいでて一風の画を描出す。唐画にもあらず。和風にもあらず。自己の工夫くふうにて。新裳しんしょうを出しければ。京じゅう妙手として。
人の言葉――自分の言葉 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
居間の床の間に、まがいの応挙おうきょらしい一幅の前に、これだけは見事な碁盤と埋れ木細工のついの石入れがあったことを思い出しながら、伝二郎はなれなれしく飯をかっこむ真似をして見せた。
もし彼をして力を絵画に伸ばさしめば日本画の上に一生面を開き得たるべく、応挙おうきょ輩をして名をほしいままにせしめざりしものを、彼はそれをも得為えなさざりき。余は日本の美術文学のために惜む。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
君までがそんな事を言っているのか。妙な事を聞くが君の家の客室に応挙おうきょとり
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
精神病で滅亡した家の宝物になっていた応挙おうきょ筆の幽霊画像——
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
無理かも知れぬが、試みに画家に例えるならば、栖鳳せいほう大観たいかんの美味さではない。靫彦ゆきひこ古径こけいでもない。芳崖ほうがい雅邦がほうでもない。崋山かざん竹田ちくでん木米もくべいでもない。呉春ごしゅんあるいは応挙おうきょか。ノー。
河豚は毒魚か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
(色彩に関する例を挙ぐれば春の木の芽の色を樹によつて染分けたるが如き、夜間燈火の映じたる樹を写したるが如き)絵画における彼の眼光は極めて高く、到底応挙おうきょ呉春ごしゅん等の及ぶ所に非ず。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
応挙おうきょが幽霊をえがくまでは幽霊の美を知らずに打ち過ぎるのである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
呉春ごしゅんはしやれたり、応挙おうきょは真面目なり、余は応挙の真面目なるを愛す。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
するとそこに応挙おうきょの絵がずらりと十幅ばかりかけてあった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)