心裏しんり)” の例文
かれえずあるものさがすやうなしか隱蔽いんぺいした心裏しんりあるものられまいといふやうな、不見目みじめ容貌ようばう村落むらうちさら必要ひつえうやうやげんじてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
吾人の心裏しんりに往来する喜怒哀楽は、それ自身において、吾人の意識の大部分を構成するのみならず、その発現を客観的にして
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いかな明敏な人でも、君と僕だけ境遇が違っては、互いに心裏しんりをくまなくあい解するなどいうことはついに不可能事であろうと思うのである。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こゝろ變化へんくわするものなり、雪三せつざう徃昔そのかみ心裏しんりうかゞはゞ、糸子いとこたいする觀念くわんねん潔白けつぱくなること、其名そのなゆきはものかは、主人しゆじん大事だいじ筋道すぢみちふりむくかたもかりしもの
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此言は心裏しんりを想ひやつて意を立てゝゐるのだから、此も亦あたると中らざるとは別であるが、而も正統記等が其跡に就いて拡張したのであらうといふことは、一箭双鵰鵬いつせんさうてうを貫いてゐる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
余が嬉しいと感ずる心裏しんりの状況には時間はあるかも知れないが、時間の流れに沿うて、逓次ていじに展開すべき出来事の内容がない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
らはあぜねりもしねえで」卯平うへい他人ひとさわぎにまれようとするよりも、自分じぶん心裏しんりあるものやつとのことさうとするやうにつぶやいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれ最早もはやそれ以上いじやうかれ心裏しんり残存ざんぞんしてものをまでうばられることにはへないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いくら説明したって元禄時代の人物には分らないにきまっている。というものはこの男の人殺しに対する評価は、人殺しから生ずる自己の心裏しんりの経験に対する評価より遥かに相場が安いのであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)