得難えがた)” の例文
さそひしか共少し外に用事も有し故三五郎ばかり先へつかはし置たり然れば是得難えがた時節じせつなりと云ふに三人の者是を聞て大によろこび何卒よき手段しゆだんを以て三五郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうして、他愛もなく手品などに見入っていることが、この頃の彼にとっては、得難えがたい休息でもあったのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もし生徒を徳育に進ましめんとならば、倫理科を廃して、一般の教員職員に善良方正の人を挙ぐべし。しかれども智育の教師たる人にして善良方正なる者は実際得難えがたし。
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
れど、大佐たいさよ、吾等われらいま塲合ばあひおいて、九死きゆうし一生いつしやうをも得難えがたことをばくに覺悟かくごせり。
音楽家としての素養そようが、一朝一夕には得難えがたいことを知ると、ライプチッヒ大学の音楽学生として、良師ワイリングの下に六か月の大精進だいしょうじんを続け、和声学と対位法の大体を修得して
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
さすれば無用むようつひえせつせむ、なんぢ一人いちにん奉公ほうこうにて萬人ばんにんのためになりたるは、おほ得難えがた忠義ちうぎぞかし、つみなんぢはづかしめつ、さぞ心外しんぐわいおもひつらむが、見棄みすてずば堪忍かんにんして、また此後このごたのむぞよ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
信も力であるから、力なき者はそれすらも得難えがたい。もとより信を取り得れば不退転の人とはなろう。信に活き切る法味の深さは言葉に余る。「信心為本」を説くのは、信仰の者の声なのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
くつ下駄げたよりも草鞋わらじの方可なり。洋服蝙蝠傘こうもりがさよりも菅笠すげがさ脚袢きゃはんの方宜し。つれなき一人旅ことに善し。されど行手ゆくてを急ぎ路程をむさぼり体力の尽くるまで歩むはかへつて俳句を得難えがたし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
呼出してなほ又調べの處六右衞門申立る樣昨日も申上候通り久八儀誤りにもせよ主人をがいし候など申儀は私しに於ても一圓合點がてん參り申さす候此度このたびの一條何分にも其意を得難えがたきことに候當時たうじいやし渡世とせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)