だま)” の例文
旧字:
『砲術調練中の過失じゃ。鳥打峠の岩鼻をまとに狙撃しておっただまが、射手いての未熟のため、こんな所へ落下した。——許されよ。御浪士』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同の遠征はけっしてむだでなかった、かれらは酒の原料や、茶の木を発見し、ヴィクンヤおよびラマを生けどり、飛びだまの使用法に熟達じゅくたつした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ほら御覧なせえ、鉄砲だまは窓の外から飛んできたのにげえねえ。あまり根も葉もないことを言って貰いたかねえや。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にはかに天井に白い泡がたつて、青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲だまのやうなものが、いきなり飛込んで来ました。
やまなし (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
受けたけれども被害はたった一つの大工場とそのそれだまの被害だけで、まだそのほかに十に余る大工場がある。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
今宵こよいこそ幸衛門にもお絹お常にも大略あらまし話して止めても止まらぬ覚悟を見せん、運悪く流れだまあたるか病気にでもなるならば帰らぬ旅の見納めと悲しいことまで考えて
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
平次はさすがに、いずまいを直してえりをかき合せました。生温かい小春日和こはるびより、午後の陽は縁側にって、ときどき生き残ったあぶだまのように飛んでくる陽気でした。
驚破すわ、このへんでいよいよ仏独戦争が始まったのに違いない。地球の向う側から、はるばる欧羅巴ヨーロッパくんだりまでやって来て、流れだまに当って討ち死にするのはいかにも残念。
お福は根岸へ帰ってから何処へも再縁せずに、家の手伝いなぞをしていましたが、上野の彰義隊の戦争のときに、流れだまにあたって死んだそうで、どこまでも運の悪い女でした
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
高角砲のばらだまが『荒鷲』の鋼鉄を射ちぬくことができず、又、煙突から真黒な煙を出して、その煙の中へかくれて見ても、どうせ、しまいには、『荒鷲』に追いつかれてしまうにきまっていると
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
かすだまじゃ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
小銃のそれだまが、地を掘ったり、民家の羽目板はめいたに、穴をあけた。佐々勢も、いっとき、奮戦を見せたが、そのうちに、後へ後へと、崩れ立った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みながひとみを定めようとするまもあらせず、サービスは風をきってヒュウとばかりに飛びだまを投げた。ねらいをあやまたず、なわ怪獣かいじゅうの足にからみついた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
バクスターは例の飛びだまをくるくるとまわして、風をきって群らがる動物のまっただなかへ投げた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
が、百姓町民はその都度つどに会うことである。火に追われ、流れだまや、白刃素槍すやりにも見舞われる。血にすべりかばねにつまずき、落ちてゆく山地の夜には、また、剽盗無頼ひょうとうぶらいの徒が待っていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、あれは、典厩信繁てんきゅうのぶしげが陣地の臆病な哨兵が、何かを粗忽そこつに見ちがえて、慌てて一発放したうろたえだまだ。——そんなものではない、もそっとおびただしく、しかも色もなく音もないものだ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
バシッ、バシッと、魚のはねるような白い飛沫が立つのは、その敵が、かれを狙撃そげきしているだまにちがいない。にもかかわらず、菅沼藤蔵は、やがて池へむかって、悠然と、放尿していた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだまだ、ながだまは飛んで来ぬ。大丈夫、死んではおるまい」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老母おふくろながだまにあたって、いつの間にか死んでいたのだった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまの密度も少ない。しかもだまが多いのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)