幾里いくり)” の例文
幾里いくりも幾里ものあいだ、ただいちめんに青すすきの波である。その一すじの道を、まッくろな一ぐんの人間が、いそぎに、いそいでいく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾里いくりともなきながれにかすみをひきたるがごとく、朝より夕べまでこと/″\く川上へつゞきたるがそのかぎりをしらず、川水も見えざるほど也。
やうしたに、うづいてくるしさうなかはらいろが、幾里いくりとなくつゞ景色けしきを、たかところからながめて、これでこそ東京とうきやうだとおもことさへあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ゐねむりをしい/\、むかし道中だうちうをしたといふ東海道とうかいだう里程りていを、大津おほつからはじめて、幾里いくり何町なんちやう五十三次ごじふさんつぎ徒歩てく饒舌しやべる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのあいだ、きゅうりは、みずに、ながれ、ながれて、よるあいだもりのかげや、ひろ野原のはらや、またいくつかのむらとおぎて、けたころにはもはや幾里いくりとなくとおくへいってしまったのです。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)
地震ぢしん地表下ちひようかおいあまふかくないところおこるものである。たゞふかくないといつても、それは地球ちきゆうおほきさに比較ひかくしていふことであつて、これを絶對ぜつたいにいふならば幾里いくり幾十粁いくじゆうきろめーとるといふ程度ていどのものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)