常談じょうだん)” の例文
それでびっくりしてかおげ、もう一そのおかしな常談じょうだんをいってやろうとした。すると、ゴットフリートのかおが目の前にあった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
すると校長と話していた、口髭くちひげの短い粟野教官はやはり微笑を浮かべながら、常談じょうだんとも真面目まじめともつかないようにこう保吉へ注意をした。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
暫くしてやっと許された一寸法師は、やっぱりニヤニヤと、おろかな笑いを浮べて、半身を起した。そして、常談じょうだんの様な調子で
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
安宅さんと何やら気の利いた常談じょうだんを交わしていらっしゃるらしいのを、私たちだけは無骨者ぶこつものらしい顔をして眺めていた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「そうですねえ。うちが遠方だから泊ってきましょうか」と、お糸さんも矢張やっぱり常談じょうだんらしく言ったけれど、もう読めた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
とわたしは自分の常談じょうだんうちきって、わたしの日ごろの空想のつづきを、仙人に話しつづけたのです——
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
いつとなく出来た仲だとやら、そのうえまっつあんよりはさばけてゐるやうでも、あの生真面目きまじめさ加減では覚束おぼつかない、どうやら常談じょうだんらしくもないお前の返詞へんじがおれの腹に落ち兼ねる
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
空気くうきまでが私たちの愉快ゆかい常談じょうだんで笑い
笑いの歌 (新字新仮名) / ウィリアム・ブレイク(著)
前掲の広告中、「里見君に非難を加えて下さい」と言ったのは勿論もちろんわたしの常談じょうだんであります。実際は非難を加えずともよろしい。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自分はこういうところで孤独な晩年を過しながら誰にも知られずに死んでゆきたいなどと御常談じょうだんのようにお書きになって寄こされたこともあったが
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
母の手紙で一えた気が又振起ふるいおこって、今朝からの今夜こそは即ち今が其時だと思うと、漫心そぞろごころになって、「泊ってかないか?」と私が常談じょうだんらしくいうと
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ひとから尊敬そんけいされるとそれに感じ易い老人ろうじんの方は、ことにそうだった。二人はルイザがそばで顔を真赤まっかにするほどひどい常談じょうだんあびせかけて、それで満足まんぞくした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
社交的な会話、洒落しゃれとか常談じょうだんとかいうものは、まるで駄目だった。彼はユーモアというものをてんで解しない様な男だった。併し議論などになると、可成雄弁に喋った。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それを今彼等の問答は無造作むぞうさに片づけてしまったのだった。ふとその事実に気のついた広子は急に常談じょうだんを言うくつろぎを感じた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かみの毛はどうしたのと聞いてみたり、父親ちちおやメルキオルの露骨ろこつ常談じょうだんにおだてられて、禿はげをたたくぞとおどしたりして、いつもそのことでかれをからかってあきなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
彼の積りではこれが一種の諧謔かいぎゃくらしいのだが、とて常談じょうだんなどとは思えない重々しい喋り方だ。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
追々馴染なじみも重なって常談じょうだんの一つも言うようになる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
常談じょうだんを言ってはいけません。近代教の大寺院などはこの国第一の大建築ですよ。どうです、ちょっと見物に行っては?」
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「まさかその人が」私は常談じょうだんの様にいいました。「長吉を殺したんではあるまいね」
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と思うと肩の上へ目白めじろ押しに並んだ五六人も乗客の顔を見廻しながら、天国の常談じょうだんを云い合っている。おや、一人の小天使は耳の穴の中から顔を出した。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
僕は僕自身を引き立てるためにも常談じょうだんを言わずにはいられなかった。が、従兄の弟は酒気を帯びた目を血走らせたまま、演説でもしているように話しつづけた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は同じ常談じょうだんを何人かの芸者と繰り返した。が、そのうちにいつの間にか、やはり愛想の好い顔をしたまま、身動きもしない玉蘭ぎょくらんの前へ褐色の一片を突きつけていた。
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
常談じょうだんを言ってはいけません。あのマッグに聞かせたら、さぞ大笑いに笑うでしょう。あなたの国でも第四階級の娘たちは売笑婦になっているではありませんか? 職工の肉を
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
主筆 常談じょうだんでしょう。……とにかくうちの雑誌にはとうていそれは載せられません。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
広子の聯想れんそうは結婚前のあるの記憶を呼び起した。母はその風呂ふろにはいりながら、彼女に日どりのきまったことを話した。それから常談じょうだんとも真面目まじめともつかずに体の具合ぐあいを尋ねたりした。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人一倍体のたくましいSは珍しい日の光を浴びたまま、幅の狭い舷梯げんていくだって行った。すると仲間の水兵が一人ひとり身軽に舷梯を登りながら、ちょうど彼とすれ違う拍子ひょうし常談じょうだんのように彼に声をかけた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
常談じょうだん言っちゃいけない。こっちはお客のない時間をって来たんだ。」
たね子の憂鬱 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
僕等は妻の常談じょうだんを機会に前よりも元気に話し出した。
蜃気楼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
Mの声は常談じょうだんらしい中にも多少の感慨をたくしていた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
常談じょうだんじゃない。何をしている?」
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
常談じょうだんでしょう。」
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)