小笊こざる)” の例文
なんで、お驚きなされたか、自分にはとんと分らぬが、此方のすがたを見ると、ご老母が、この小笊こざるを捨ててお逃げなされた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
店の前の椅子に劉任瞻が腰かけて、小笊こざる[#「小笊こざる」は底本では「小※こざる」]に盛った穀物を両手に揉んでは、笊を揺すって籾殻もみがらを吹いている。
ほりそばへはぐんぢやねえぞ、衣物きものよごすとかねえぞ」おつぎがいふのをみゝへもれないで小笊こざるにしてはしつてく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
役者の仕着しきせを着たいやしい顔の男が、渋紙しぶかみを張った小笊こざるをもって、次の幕の料金を集めに来たので、長吉は時間を心配しながらもそのまま居残った。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
子供たちのすべてが傘をあみだにして下段の方を見ると、ムク犬が首に小笊こざるを下げて、悠々ゆうゆうとのぼって来る。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
手に小笊こざるを持った男の子がうさぎのようにきょときょとして出て来た。
草藪の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして、その手には、草の根を掻きわけて探した、まだ若い嫁菜よめなだの、ふきのとうだの、いろいろな菜根が小笊こざるの中へみこまれて持たれていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
役者の仕着しきせを着たいやしい顔の男が、渋紙しぶかみを張つた小笊こざるをもつて、次のまくの料金を集めに来たので、長吉ちやうきちは時間を心配しながらものまゝ居残ゐのこつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
村落むら子供等こどもらは「三ぺいぴいつく/\」と雲雀ひばり鳴聲なきごゑ眞似まねしながら、小笊こざるつたり叉手さでつたりしてぢやぶ/\とこゝろよい田圃たんぼみづわたつてあるいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
湯をこぼして小笊こざるの中へ栗を入れて、それと鉄瓶の水を入れ換えたのを両手に持って
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
殊さらに親しみを見せ、そばへ寄って、小笊こざるの中の青いものを覗きかけると、老尼は、愕然がくぜんと小笊をそこへ捨てて
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれ小言こごとみゝへもれないで「ねえようろよう」と小笊こざるげてはちよこ/\とねるやうにして小刻こきざみにあしうごかしながらおつぎのめることばうながしてまない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
傘をさして、手には小笊こざるを提げております。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ふきとうんだ小笊こざるの中へ、藪椿やぶつばきを一枝折って、それを袂にかかえながら、彼女はわが家の台所口へ戻って来た。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、次郎は仮面めんの目の穴から半五郎の膳をのぞき、小笊こざるの中に食べ残してあるきぬかつぎを見つけて、その皮をむいては仮面の下からムシャムシャと頬張って
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶏師は、小笊こざるの中の銭を、何枚もかぞえた。小冠者も出して、一しょにおいた。
とだけいって、またざぶざぶ小笊こざるを小川にひたして振っていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)