小人しょうじん)” の例文
小人しょうじんたまを抱いて罪あり、例の孫策が預けておいた伝国でんこく玉璽ぎょくじがあったため、とうとうこんな大それた人間が出てしまったのである。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小人しょうじんから罵詈ばりされるとき、罵詈それ自身は別に痛痒つうようを感ぜぬが、その小人しょうじんの面前に起臥きがしなければならぬとすれば、誰しも不愉快だろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
然りといへども小人しょうじんにしてたまを抱けばかならずあやまちあり。鏡につらをうつして分を守るは身を全うするの道たるを思はば襤褸買必しも百損といふを得んや。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「やれやれ、女子じょし小人しょうじんはなんとかじゃ。泣きたいだけ泣いてもらお。泣きたいものは、なんぼでも泣け泣け」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「君子は義をもってじょうとす。君子くんし勇ありて義なければらんす。小人しょうじん勇ありて義なければとうをなす」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おれは、他人がすのを喜ばぬほど小人しょうじんでもないが、きょうの結婚式に出たら、柚子を
春雪 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
吝嗇者りんしょくもの日済ひなし督促はたるように、われよりあせりて今戻せ明日あす返せとせがむが小人しょうじんにて、いわゆる大人たいじんとは一切の勘定を天道様てんとうさまの銀行に任して、われは真一文字にわが分をかせぐ者ぞ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
きょうの修身の講義など、ことに退屈だった。英雄と小人しょうじんという題なんだけど、金子先生は、ただやたらに、ナポレオンやソクラテスをほめて、市井しせいの小人のみじめさを罵倒ばとうするのだ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
首は千ばかりっておりますが、まだ新らしくといしにかけたようです。悪人を見ると鳴ってぬけます、どうも人を殺すのが近うございます。公子はどうか君子くんしと親しんで、小人しょうじんを遠ざけてください。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
小人しょうじんに国家を治めしむれば、災害ならび至る。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小人しょうじんだ。ホムンクルスだ。
「相手は小人しょうじん。——小人の中でも小人型の山淵右近ではないか。おぬしのために、首尾よう鼻をあかされることを、祈っておるはずはない」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とて、小人しょうじんが英雄の心事を解し得ぬにたとえたが、この句はひとり人物の大小の差を示すのみにあらで、小人しょうじんと小人の間にも、大人だいじんと大人との間にも当たる言である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
残念ではあるがかかる小人しょうじんを敵にしてはいかなる東郷大将もほどこすべき策がない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
来るも明白、去ることも明白な関羽のきれいな行動にたいして、そんな小人しょうじんの怒りは抱こうとしても抱けなかったのである。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君子くんしはそのつみにくんでその人を憎まずとあるが、かくのごときは君子くんしにして初めてなし得ることで、我々凡夫ぼんぷ小人しょうじんは、罪ならばまだしものこと、いささかの誤りがあっても
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
小供の時から、こんなに教育されるから、いやにひねっこびた、植木鉢うえきばちかえでみたような小人しょうじんが出来るんだ。無邪気むじゃきならいっしょに笑ってもいいが、こりゃなんだ。小供のくせおつに毒気を持ってる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聞きたいだけのものらしい! いやまことに、小人しょうじん閑戯かんぎをお見せしてお恥かしい。では、おいとま申す。ごめん!
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と城市の辻に立たせ、首を刎ねて、不義佞智ねいち小人しょうじんもまたかくの如しと、数日、往来の見世物にしておいた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小人しょうじん……小人の浅慮あさはかさ。……仰せのように、いつしか、思いあがっておりました。……その紋太夫の心に乗じて、おそらく魔などがしたものにござりましょう。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんな小人しょうじんの下にはいたくもないが、さて、天下ほかに身のおくところもない身だし……
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といわんばかりに啓之助は、小人しょうじんらしい溜飲りゅういんを下げていた。剣山の帰途、お米と自分の姿へ、馬上から諷罵ふうばをあびせかけて行った有村の態度には、彼とても、こころよくはなかったから。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ううむッ。小人しょうじんめッ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)