宦官かんがん)” の例文
この刑を受けた者を閹人えんじんと称し、宮廷の宦官かんがんの大部分がこれであったことは言うまでもない。人もあろうに司馬遷しばせんがこの刑にったのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ある似而非えせコルネイユがティリダートを書き、ある宦官かんがんが後宮を所有し、陸軍のあるプルュドンムが偶然に一時期を画すべき決定的勝利を得
彼の養祖父の曹騰そうとうは、漢朝の中常侍ちゅうじょうじであるから、いわゆる宦官かんがんであり、宦官なるが故に、当然、子はなかった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男にふんする女は怪物にすぎない——それになしてしまうとは? ハムレットを、宦官かんがんになし、もしくは曖昧あいまいな両性人物になすとは! そういう嫌悪けんおすべきばかばかしさが
いわんや又鄭和は宦官かんがんにして、胡濙こえいともにせるの朱祥しゅしょう内侍ないしたるをや。秘意察す可きあるなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そうして妾を見送って来た二人の宦官かんがんと、うちの番をしていた掃除人をかえしてから、唯一人で家内の様子を隈なく調べてみますと、姉さんは死ぬ覚悟をして家を出られたらしく
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ある人借金に困って逐電し餓えて一城に入り、大勢町を行くに紛れ込んで王宮らしい家に到り進むと、大広間の上に小姓や宦官かんがんに取り囲まれた貴人あり、起って諸客に会釈した。
われわれの貞潔と美徳を保持するために宦官かんがんを置くもよい、今日の狭小な保守的道徳の埒を越える者は、片っ端から銃殺するもよい——すべてこれ人間のしゅの改良のためなんだから。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
……紫の間と呼ばれている部屋には、「ペンタビルギオン」という、上に塔の五つ並んでいる風変りの戸棚の中に、皇帝の衣裳がしまってあったが、此の部屋から宦官かんがんが皇帝の祭服を運んで来た。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しかも、それは宦官かんがんのシット心である。キンヌキ馬のシット心である。「じゃ、代るから、てめえ、やってみろ」と言われても、やれはしない。それだけに、いつまでも果てしなく永続きがする。
恐怖の季節 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
それを自覚してからは、大丈夫だいじょうふたるべきものが、こんな宦官かんがんのするような態度をしてはならないと反省することもあったが、好い子から美少年に進化した今日も、この媚が全くは無くならずにいる。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
男を女のように一変して、宦官かんがんといって宮廷などへ入れる。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
宦官かんがんが二人話しながら出て来る。
青年と死 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「何太后に召されたと聞いたので、案じていたところです。何か、宦官かんがんの問題で、ご内談があったのでしょう」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宣宗せんそうぎたまいたる天子の、建文帝に対して如何いかんの感をやしたまえる。御史の密奏を聞召きこしめして、すなわ宦官かんがんの建文帝に親しくつかえたる者を召して実否を探らしめたもう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その顔つきは、奴隷市どれいいちで山出し女どもの中にひとりのヴィーナスを見いだした宦官かんがんの長のようでもあり、三文絵の中にラファエロの一枚を掘り出した美術愛好者のようでもあった。
しかし繊細な貧血的な身体をし宝石を飾りたててるこのビザンチンの皇后は、軽薄才子、美学者、批評家、などという多くの宦官かんがんにとり巻かれていた。ただ国民が音楽に通じていなかった。
「董太后のお生命をちぢめた者は何進なりと、また、例の宦官かんがんどもが、しきりと流言を放っているのを」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
創業の元勲として太祖の愛重あいちょうするところとなれるのみならず、西安せいあんに水道を設けては人を利し、応天おうてんに田租を減じては民をめぐみ、誅戮ちゅうりくすくなくすることを勧め、宦官かんがんさかんにすることをいさ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
修道女は宮女であり、牧師は宦官かんがんであった。信仰熱き女らは、夢のうちに選まれてキリストを所有している。夜になると、その裸体の美しい青年は十字架からおりてきて、分房の歓喜の的となった。
民間の者は、彼らを宦官かんがんと称した。君側の権をにぎり後宮こうきゅうにも勢力があった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真宗崩じて後、其きさきにくしみを受け、ほしいままに永定陵を改めたるによって罪をこうむり、且つ宦官かんがん雷允恭らいいんきょうと交通したるを論ぜられ、崖州に遠謫えんたくせられ、数年にして道州にうつされ、致仕して光州に居りてしゅつした。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宦官かんがん的な側用人、無能で佞智ねいちばかりもつ賄賂わいろ好きな役人、それにつながる御用商人やら、腐れ儒者やら、大奥と表を通う穴道の雑人ぞうにんやら、どしどし罷免したり、入れえたりしたが、それらの前代
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)