かない)” の例文
ガクガクする膝頭を踏み締め踏み締め腰を抱えて此家ここへ帰りまして「お医者お医者」とかないに云いながら夜具をかぶって慄えておりました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かないまどから、あなたさまのラプンツェルをのぞきまして、べたい、べたいとおもいつめて、ぬくらいになりましたのです。
かないが書斎に追ひ込んぢまつたので、僕は邪魔されようにもされなくなつたのだ。君、いい工夫はないものかしら。」
男というのは当時某会社に出勤していたが、何しろこんなにまで望んでったかないのことでもあるから、若夫婦の一家は近所の者もうらやむほどむつまじかった。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
向うの方からめっかちのばあさんが、三つ位の女の児を抱いて来ましたが、老人はそれを見ると、あの女の児は君のかないじゃといいますから、その男はひどく怒って
かない記念かたみだったのです。二人の白骨もともに、革鞄の中にあります。墓も一まとめに持って行くのです。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かないをもらうのは、舅姑りょうしんにつかえさせるためなのだ。こんなことで何が妻だ。」
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「私はかないに不幸な者でして……こう申上げると最早もう御分かりになりましょうが」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かないが塩でで、持って来よったようじゃが最初のうちは香気が高くてナカナカ美味おいしいものじゃよ。新牛蒡ごぼうのようなものじゃ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これらの苦痛や煩悶がもとで前よりあった肺病が一層いっそう悪くなってついに娘はどっと床についた、かないがこんな病気になったからとて、夫は別に医師にかけるではなし
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
西山氏は顔を絵具皿のやうに真紅まつかにした。かないの里方に立派なうちを持つたものは、どうかするとよくそんな顔をするものだ。——だがまあ我慢するさ、何事も親戚みうちの事だから。
かないは嫁入りの時期を失うから、他から婿を取ると言ったが、わしは、あんたのお父さんと約束があるから、それには耳を傾けなかった、あれもまた決して、他へ往こうとせずに
金鳳釵記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
国に居た頃でも、私が外から帰って来る、母やかないは無愛想でしても、女児やつ阿爺とうさん、阿爺と歓迎して、帽子ぼうしをしまったり、れはよくするのです。私もまったく女児を亡くしてがっかりしてしまいました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何だか横浜の自宅に容易ならぬ事件でも起っているような気がして……かないが愛読している探偵小説の書き振りを見ても、留守宅に大事件が起るのは十中八
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
打ち打擲ちょうちゃくはまだしもの事、ある時などは、白魚しらおの様な細指を引きさいて、赤い血が流れて痛いのでかないが泣くのを見て、カラカラと笑っていると云った様な実に狂気きちがいじみた冷酷の処置であった。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
かないですか、かないなら多分この電話の片つ方に懸つてるかも知れませんよ。」
「大丈夫と思います。今夜、ここへ伺った事は誰も知りませんし……それにかないがズット前、姫草に指環を一つ買って遣るって言った事があるそうですから……」
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
批評家は町で友達に出会つても、うちかないの顔を見ても、すぐこの絵の話をした。もしか自分の裏口に兎が飼つてあつたら、批評家は厭といふ程耳を引張つて栖鳳氏の噂を吹き込んだに相違なかつた。
とんでもない濡衣ぬれぎぬを着せられて追い出されちゃったんだよ。僕のかないが非常に可愛がっていたんだがね。イヤ。本人も喜んでいるよ。この間と昨日と二度電話をかけてね。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それじゃお酒を一斗差し上げますから、私のかないの病気を治して下さいませぬか」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)