妖術ようじゅつ)” の例文
呂宋兵衛るそんべえはジリジリと身をにじらせた。蝙蝠をみたとっさに思いうかんだのは、獣遁じゅうとんの一ぽう南蛮流なんばんりゅう妖術ようじゅつでは化獣縮身けじゅうしゅくしんの術という。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手で叩く真似をすると、えへへ、と権ちゃんの引込ひっこんだ工合ぐあいが、いんは結ばないが、姉さんの妖術ようじゅつかかったようであった。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第一、生きておる魂を、それも現在生みの母が供養するなどということが、どうしてできるのじゃ? それは大きな罪で、妖術ようじゅつにも等しいことじゃ。
日本語も満足に使えぬ者等が言葉の妄解妄用をはばからぬので、今では忍術は妖術ようじゅつのように思われているが、忍術は妖術では無い、潜行偵察の術である。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「そのまえに知っておきたいのよ」おみのは上半身をゆらっと振った、「まさか妖術ようじゅつを使うわけでもないでしょう」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
でなくは切支丹きりしたんではないかと、韮山にらやまで興行の折は、江川太郎左衛門えがわたろうざえもん様の手代衆が一応お調べになりまして、確かに魔法妖術ようじゅつときめて、既に獄門にもなろうとしましたのを
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
お前の話を黙って聞いていると、まるで狐狸こりたぐいが一変して嬋娟せんけんたる美女にけるのと同じように聞える。まさかお前は、金博士から妖術ようじゅつを教わってきたのではあるまい
、すべて、お信じになりませぬよう、お願い申しあげます。なかには、いろいろの作りごともございますし、また、妖術ようじゅつなどといわれておりますようなものもございますので
かれとしては未曾有みぞうのことには、さっきこうしてっぴるまひょいと裏門からはいって来たのだが、いかなる妖術ようじゅつを心得ているものか、誰ひとり家人にも見とがめられずに
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
きっと、魔法使いの妖術ようじゅつにかかったのです。ありもしないものが、目に見えたのでしょう。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
暗誦あんしょう、定期的な半休や、散歩、運動場での喧嘩けんかや、遊戯や、悪企わるだくみ、——こんな事がらが、長いあいだ忘れられていた心の妖術ようじゅつによって、あまたの感覚、かずかずの豊富な出来事
そう云いながら、瑠璃子は嫣然にっこりと笑った。勝平は、妖術ようじゅつにでもかゝったように、ぼんやりと相手の美しい唇を見詰めていた。瑠璃子は相手を人とも思わないように傍若無人ぼうじゃくぶじんだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これは一体夢でしょうか? そうでなければナオミはどうして、何処どこからそんな魔法を授かり、妖術ようじゅつを覚えて来たのでしょうか? 二三日前にはあの薄汚い銘仙の着物を着ていた彼女が、………
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
妖術ようじゅつ者にたいする信仰、文学様式の変態などと同じものだった。
アイツは一本の筍を五時間もむく妖術ようじゅつ使いなんだなア。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「おおせ、ごもっともです。では方々かたがた呂宋兵衛るそんべえをこの三じゅうへひっ立てて、かならず妖術ようじゅつなどで逃げせぬように厳重なご用意あるよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間というものは奇跡なくして生きることができないから、自分で勝手に新しい奇跡を作り出して、果ては祈祷師きとうしの奇跡や、巫女みこ妖術ようじゅつまで信ずるようになる。
「おそれながら陛下へいか、すべて書物しょもつにかいてありますことを、そのままおもちいになってはなりません。あれはこしらえごとでございます。いわば、妖術ようじゅつ魔法まほうのるいでございます。」
そが上にしるされたる妖術ようじゅつを解かんとて、竜のむくろを道より押しのけ、勇を鼓してやかたの白銀の床を踏み、楯のかかれる壁へ近づきけるに、楯はまことに彼の来たり取るを待たずして
アア、小林君は魔人の妖術ようじゅつによって、生きた銅像にされてしまったのでしょうか。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しわす、つごもりの雪の夜に、なさけの宿を参らせた、貧家のふすまむしろの中に、旅僧が小判になっていたのじゃない。魔法妖術ようじゅつをつかうか知らん、お客が蝦蟆がまに変じた形で、ひょこんと床間とこのまに乗っている。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あれは一種の妖術ようじゅつだよ」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
む、ほかではないが、こよいの計略けいりゃく呂宋兵衛るそんべえ妖術ようじゅつにやぶられ、いままた、伊那丸いなまるさまはじめ、その他の旗本はたもとたちは人穴ひとあなの殿堂さして攻めのぼっていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これも、あのインド人だけが知っている、摩訶不思議まかふしぎ妖術ようじゅつなのでしょうか。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
妖術ようじゅつである。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
怪物は又しても妖術ようじゅつを使って、消え失せてしまったのであろうか。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
怪物は人間界の法則を無視した妖術ようじゅつを心得ていたのであろうか。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)