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好物
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かうぶつ
珍らしき
客に
馳走は
出來ねど
好物の
今川燒、
里芋の
煮ころがしなど、
澤山たべろよと
言ふ
言葉が
嬉し、
苦勞はかけまじと
思へど
見す
見す
大晦日に
迫りたる
家の
難義
なし
茶碗に
汲て
舌打鳴し呑ける程に
胸に一物ある寶澤は
酌など致し種々と
勸めける婆は
好物の酒なれば勸めに隨ひ
辭儀もせず呑ければ
漸次に
醉出て今は
正體無醉臥たり寶澤熟々
此體を
ほほう これはわしの大
好物でして ひとつちやうだい
致しませう
今宵は
舊暦の十三
夜、
舊弊なれどお
月見の
眞似事に
團子をこしらへてお
月樣にお
備へ
申せし、これはお
前も
好物なれば
少々なりとも
亥之助に
持たせて
上やうと
思ふたれど
見て是は/\
手厚き
土産何よりの
好物然も
澤山に
惠まれ千萬
忝けなし清兵衞貴樣の店の酒を飮では外の酒は一
向飮ぬ
何も
結構々々と大いに
悦び
直樣肴を
調理酒を
開き
酒宴にこそは及びけれ