天井裏てんじやううら)” の例文
そのくせ鼠は毎晩のやうに天井裏てんじやううらを走りまはつてゐた。彼等は、——殊に彼の妻は猫の横着わうちやくを憎み出した。が、それは横着ではなかつた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自分じぶんいへで、とへば猶更なほさらです……いてある事柄ことがら事柄ことがらだけに、すぐにもえさしがつて、天井裏てんじやううらけさうで可恐おそろしい。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「片付けは濟みましたよ、一と通り清めて、佛樣を隣の部屋へ移した後で、天井裏てんじやううらに一體何があるのかと思つて、押入から這ひ上がつたと見たと思つて下さい」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
蘿月らげつ仕方しかたなしに雨戸あまどめて、再びぼんやりつるしランプのしたすわつて、続けざまに煙草たばこんでは柱時計はしらどけいの針の動くのをながめた。時々ねずみおそろしいひゞきをたてゝ天井裏てんじやううらを走る。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
……つゞいて、トン、とおとがする。をんな二人ふたりねむつた天井裏てんじやううらを、トコ、トン、トコ、トン、トコ、トン、トコ、トン。はゝあねずみだ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ながら、のまゝ、ひらきける、と小児こどもせなに、すそ後抱うしろだきにして彫像てうざうたけつて、まげが、天井裏てんじやううらたかところえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あの、とほりだ。さすがに、たゝみうへへはちかづけないやうにふせぐが、天井裏てんじやううらから、臺所だいどころねずみえたことは一通ひととほりでない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
次第しだいに、とこはしら天井裏てんじやううら鴨居かもゐ障子しやうじさんたゝみのへり。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)